この設問はパソコン導入に対する経営側の意識を問うものである。導入のきっかけは1つではなく、複数の要因が絡み合うものである。今回はその導入決定に関して経営者が自ら積極的・自発的に導入したのか、それとも周囲の声に耳を傾けた結果導入に踏み切ったのかを調査してみた。選択肢として「経営トップの独自の判断」は能動的・自発的なものであり、「時流に乗り遅れないため」は自発的ではあるが、時流に影響されている点で消極的と考える。残りの選択肢は基本的に受動的・消極的とみなす。
本設問は複数回答である。いくつの選択肢を選んだのかを調べてみると
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 全体 |
243 | 114 | 29 | 6 | 1 | 0 | 393 |
61.8% | 29.0% | 7.4% | 1.5% | 0.3% | 0.0% |
という結果になった。2つまで選択した企業で90%を超えている。ここをもう少し詳しく分析して見よう。1つしか選択していない企業数は
S1 | S2 | S3 | S4 | S5 | S6 | 全体 |
106 | 18 | 9 | 75 | 2 | 33 | 243 |
43.6% | 7.4% | 3.7% | 30.9% | 0.8% | 13.6% |
であり、2つ選択した企業の回答状況は
S2 | S3 | S4 | S5 | S6 | ||
S1 | 21 | 6 | 46 | 1 | 2 | 76 |
S2 | 1 | 15 | 1 | 1 | 39 | |
S3 | 9 | 0 | 0 | 16 | ||
S4 | 8 | 3 | 81 | |||
S5 | 0 | 10 |
これを回答数順で並び替えてみると
経営トップ独自の判断(単独) | 108 |
時流に乗り遅れないため(単独) | 75 |
経営トップ独自の判断&時流に乗り遅れないため | 46 |
経営トップ独自の判断&従業員からの要望 | 21 |
従業員からの要望(単独) | 18 |
というようになった。以上の結果も参考にして全体集計の結果を見てみよう。主たるきっかけは「経営トップ独自の判断」と「時流に乗り遅れないため」であり、それを「従業員からの要望」が後押ししているということになる(図3-8-1)。予想よりも「取引先からの要請」が低いポイントになっている。どうしても中小・零細企業は第2次、第3次下請が多いため、大企業からの影響を比較的受けにくくなっているのであろう。
業種別に目を転じてみる。特徴的な回答を出しているのが、情報関連と金融・保険業である(図3-8-2)。情報関連はほとんどの企業が「経営トップの独自判断」に回答している。その理由として「時流に乗り遅れないため」となる。情報化の最先端を走っている業種であればこそであろう。これに対して金融・保険業は「取引先からの要請」において他の業種の2倍近い回答数が寄せられている。これは保険業界がきれいな縦系列に別れている。そのため親保険会社の影響力が大きいことが容易に推測できる。
従業員規模別で見てみると、特徴的な点は3つある(図3-8-3)。1つは「時流に乗り遅れない」において300人以上の企業からの回答がかなり少ないことと、「従業員からの要望」において100〜199人の企業からの回答が6割近くあることである。また、「取引先からの要請」の回答数をみてみると従業員数50人が境目になっていることがわかる。
全体的に見てみると「使いこなす自信がない」、「コスト負担」の2つを多くの企業が挙げている(図3-9-1)。「使いこなす自信がない」というのは漠然とパソコンに対しての恐怖心の現れであると思われる。これはコンピュータがまだまだ道具としての完成度が低いと意味する。逆に、経営者の情報リテラシーが低いと思われる。
業種別で見てみる。全般的に「使いこなす自信がない」と回答している企業が多い(図3-9-2)が、さすがに導入の割合が多い金融・保険業と情報関連の回答比率は低い。卸売業と建設業は「コスト負担」をあまり不安材料と見ていない。逆に導入が進んでいる金融・保険業と情報関連の企業からの回答数が多い。意外なことに「社内に人材がいない」では自動車関連の製造業が突出して回答している。次回の調査において詳細に調べてみたい点の1つである。
従業員規模別で見てみると(図3-9-3)、規模が大きいほど「使いこなす自信がない」ことは少なくなり、「コスト負担」と「社内に人材がいない」は逆に規模が小さいほど少なくなる。典型的な回答と思われる。