新春インタビュー
『勇気を以て挑戦
    =皆で成功するために=』
岡崎商工会議所 会頭 大川博美
 昨年11月に本所会頭に就任した大川博美氏から、新年を迎えるにあたり、中小企業を取り巻く経済状況を踏まえ、会頭としての抱負、経営者としての想いを伺いました。
(聞き手 岡崎商工会議所 専務理事 齋藤眞澄)

株式会社オリバー代表取締役社長
昭和6年1月16日生まれ。教員、サラリーマンを経て昭和42年に「富士スチール(現オリバー)」設立。
昭和60年から本所議員、平成3年から平成6年まで副会頭、平成6年4月より会頭に就任。
□■柱は「創業支援・市街地活性化・広域連携」■□

Q:明けましておめでとうございます。21世紀は「改革の世紀」といわれています。
 商工会議所では昨年11月役員・議員の改選が行われ、改革に取り組むための新たな体制がスタートしました。そこで、まず、会頭の抱負をお聞かせください。

A:会頭に就任以来、"岡崎の町をいかに活性化していくか"について勉強し、様々な事業に取り組んでまいりました。しかし、景気が予想以上に後退してしまい、戦後これだけ不況になったことはこれまでに例がありません。この不況下で、従来から取り組んできた「創業支援」、「市街地活性化」で着実な成果を出しながら、活力ある地域創造のため「広域連携」にも積極的に取り組んでいきたいと考えております。

□■新しいチャレンジを■□

Q:「創業支援」については具体的にはどのような取組みを。

A:まず、創業にチャレンジする人に、起業に対する心構えからビジネスプランの作成に至る各種情報を提供するほか、新しい分野への進出や事業の多角化を考えている中小企業に親身のアドバイスを、全力をあげて実施します。
 また、岡崎が誇る技能・技術のネットワークを構築し、情報量の拡大・マッチングも行い、技術指導、人的な支援も行います。


□■クルマ対策と街・店の魅力アップ■□

Q:「活力ある地域の為に」ということですが、中心市街地活性化については具体的にはどのような取組みをお考えですか。

A:岡崎はかつて西三河の中核都市であり、戦後は各地から非常に多くの方々が岡崎の中心街へ足を運んでくれました。しかし、"時代の変革"と申しますか、自家用車の保有率が飛躍的に上がり、駐車場がないと買い物に来ることができない。これが問題の1つにもなっています。
 ただ、駐車場の問題だけでなく、商店街のみなさんがいかに上手く商売をされるか、人を集めることが出来るか、時代の流れにあった経営を勉強し、実践していただくことが大事です。
 商工会議所では、会員事業所の方に多様な事例を紹介しながら皆様のご協力を仰ぎ、中心市街地の活性化を支援し、そして、皆様が培っている情報を出し合い、情報交流の場として相互に働きかけが出きるよう取り組みます。


□■幸田・額田町、そして蒲郡市と相互補完■□

Q:中心市街地の活性化を進めると同時に、周辺地域との連携による活性化・広域連携にも従来から取り組んでいますが。

商工会議所が進める広域連携とは、近隣の幸田町、額田町、そして蒲郡市など複数の地域が地域課題の解決や地域ビジョンの実現を通して、それぞれの目的意識に基づき連携することです。岡崎は他の地域に比べ、歴史的資産そして地域に根ざした産業が多いといえます。が、それ故に抱える問題も多くあります。近隣地域と相互に広域的な補完関係を持った活動を展開することで、個性と活力ある地域づくりを進めていきます。

□■オリバーは勇気とチャレンジ■□

Q:経済の低成長時代の中で、会頭が社長を務めていらっしゃるオリバーは着実に伸びてきていますが、経営するうえで特に留意されている点と、企業経営者としてのアドバイスをいただければ。

A:現在、私は株式会社オリバーを母体として5つの会社を経営しています。昭和42年8月に自宅の子供部屋から資本金100万円で創業してから35年、現在の資本金は63億6200万円という規模になっております。家具・インテリア業界におきましても、昨年業務用椅子を約50万脚販売し、全国NO.1になったかと思います。しかし、ここまで成長するにはいろいろありました。ただ、いつも経営の基本としてきた言葉があります。「勇気を以て前進」、オリバーの社是にも掲げています。ただ、勇気だけではなく、常にそして迅速に時代の流れを掴み、知恵をだして、計画的に邁進することが必要です。
 また、わが社には商いの基本精神
「オリバー戦陣訓
一. 私は数字に執念を燃やし目標は必ず達成します
一. 私は一致団結力を合わせ組織に忠誠を尽くします 
一. 私は売る商品にほれこみその商品知識を体得します
一. 私は礼節を尊び誠心誠意顧客に接します
一. 私は求めて難にあたり自己の限界に挑戦します」

というものがございまして、私は社員にいつもこんなことを言っています。「自分の給料を稼ぐだけでは会社は儲からない、自分の給料の3倍から4倍の利益をださないと会社は経営できない、そして、「チャレンジ」。目標に向かって突き進むチャレンジ精神がないと会社は発展しない」と。ですから、どんな仕事にも目標を立てて、目標を達成する喜びを味わうことが大切です。自分ががんばれば、必ず自分のところに戻ってくる。そして会社も発展する。勇気をもって社長が社員を引っ張ることができれば、必ず成功すると思います。


□■価値主義への転換■□

Q:会社の発展には基本理念に基づいた社員教育が不可欠であり、会頭の会社では、社員を"世界に通用する商人"に育てあげる、そのように感じました。また、商売そのものについてのアドバイスはございますか。

A:そうですね、商売に関してですが日本人はどちらかというと"原価主義・原価がいくらかかったからいくらで売ろう"、この考え方が原点にあると言えます。ところが、私が訪問した国のなかに"価値主義"という形で商売をしている会社が多くありました。原価に関わらず、お客様が価値を認めてくれるのならば、その希望された価格で売る。経営者が社員を引っ張るには、やはり、自分の足で稼いで徹底的に商品を吟味することが大切です。私も日本国内だけでなく、世界各国に足を伸ばしました。また、世界で最も商人として名高いユダヤ商人や、インド・華僑の商人を勉強すると良いと思います。

□■創造とひらめき■□

Q:商品を吟味するために世界各国を廻られて、その中でも特に印象に残っている国はありますか。

A:アジアだけでなく、欧州・米・アフリカなどいろいろ足を運び、たくさんの刺激を受けました。生活習慣や慣習の違いもありますから、家具・インテリアについては国ごとに特徴がかなり出ています。そのなかでも特に印象深いのはイタリアでしょうか。カラーとデザインが非常に良いですし、歴史に裏打ちされたイマジネーション・インスピレーション(創造・ひらめき)が溢れているように感じました。発想の転換が上手なんですね。
 また、今は、少子高齢化の時代です。国をあげて福祉関連に力を入れている北欧、フィンランド・ノルウェーなどは家具を造る材質から凝っており、介護をするうえで非常に利便性の高い椅子を作っています。わが社でもそこで製造された椅子を輸入し、全国に販売しています。

 
□■皆で成功するために■□

Q:それでは、最後に岡崎商工会議所の会員の皆様にひとことお願いいたします。

A:会員の皆様もがんばっていらっしゃると思います。しかし、世の中が非常に大きく変わりましたので、この変動・移り変わりをキャッチしていただきたい。そして、今、私たちがやらなければならないことは、勇気を以て挑戦することです。こういう時代だからこそ、皆様が持っている情報を共有し、お互いがカバーしながら新しい可能性を見出し、成果につなげていくことが大事だと考えます。商工業者の皆様が一致団結し、この厳しい経済環境を乗り越えていただきたい。
 商工会議所としましても地域の企業の皆様から信頼をいただき、存在感のある組織になるための努力、知恵を出し、夢と希望と勇気をもって事業に臨んでまいりますので、これまで以上に商工会議所に気軽にお越しいただきたいと思っております。