今回は、三晃堂表具店の大高一晃さんにお話を伺いました。

康生通西4−40 TEL24−3357 

 神奈川の厚木市から、祖父が祖父の母の出身であった岡崎に移り住んだのをきっかけにこの地で始めて約70年、私で3代目になります。
 お客様からお預かりした絵や書の作品の裏に紙をあてて裏打ちをし、絹なので織られた西陣織の布を張り、掛け軸やふすまなどの修復・仕立てを手がけています。価値ある作品に直に触れられ、その作品を時代を越えて、自分の手で再生させられる喜び、それがこの仕事の最大の魅力だと感じています。

 時代の流れの中でこの業界も他に違わず厳しい時代を迎えており、価格競争が激化しています。価格を下げるため、貼り付けに化学薬品を使用するところが増えていますが、化学薬品は、再度修復する時に作品を傷つけてしまうため、うちではデンプン糊にこだわり、昔と何一つ変わらぬ製法で仕上げています。デンプン糊での仕上げが将来的にも「いいもの」が出来るのは事実ですが、その“よさ”を理解していただける方が少なくなってきており、価格の面でおされているのが現状ですね。

 そのものの“よさ”は体験から身につくもので、それには小さい頃から文化に触れる機会をもつことがなによりではないかと思います。歴史ある岡崎の街には、伝統と名のつく文化財や技術がいくつもあり、それに触れることのできる環境についてはすでに用意されていると思います。
 例えば幼少の頃から、気軽にお茶席に行ける環境をつくり、その茶室にある茶碗や掛け軸を鑑賞したり、またうちでいえば、小中学校の「かきぞめ」の際に、裏打ちの方法を教えてあげて、実際に子供達が自分の作品を仕上げることから伝統工芸に親しむような、日頃の生活の中でさりげなく体験していくようなシチュエーションがもてたらと思います。
 昔ながらの製法にこだわって、「いいもの」を作るのはもちろん、地域に暮らす人の生活の中に昔から続くものの“よさ”に触れてもらえる機会をつくることで、「いいもの」を分かる人が増えていってくれたらと感じています。

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