いにしえの旅の名残(なごり)をたどる現代版東海道中の愉しみ(その2)

 江戸の旅人とおなじテンポと心持ちで、とまではいかなくとも、それこそ「ひかり」のようなスピードで通りすぎることの多い東海道を、たまにはすこしばかりのんびりと、また気ままに旅するのも楽しいものです。

 53の宿場に日本橋と三条大橋を加えた55の場所と、それをつなぐ旧街道。どこか一つの場所に旅するもよし。街道をすべて踏破するもよし。街道筋では、いにしえの名残を数多く見いだすことができるはずです。一方、大きく変貌をとげ、かつてのおもかげさえ見いだせない場所も多いでしょう。しかし、それだから旅がつまらなくなるわけではありません。見る影もなくなった風景の変貌が、長い時間の経過をしめすものであるなら、それもまた現代版東海道中の愉しみの一つでしょう。東海道五十三次をめぐる旅は、場所への旅であるとともに「時間の旅」でもあるのですから。         出典「完全 東海道五十三次ガイド(東海道ネットワークの会)」

五雲亭貞秀 三州岡崎矢矧大橋勝景