伝統工芸や地場産業に携わるみなさまにお話をうかがう新コーナーです。


粟生人形工房
人形師 粟生正樹 氏


 仕事場の掃除など、雑用から始まった修業時代から、人形づくりに携わって40年になります。親方のもと辛抱と努力の連続でしたが、人形づくりに情熱を傾け続け技の向上に努めました。「おまえの作ったものなら買ってやるぞ」とお客さんにいってもらえるようになってようやく自分に自信がつき、その期待に応えようとよりいいものを目指す毎日でしたね。

 ちょうど仕事を始めた頃は高度成長時代で、毎日手におえないほどの仕事が入り、てんてこまいでしたが、そんな時代にもなかなか儲けにはつながりませんでしたね。職人の仕事は儲けを望むには難しいものですが、時代の変化に流されることなく地道に取り組み、後生に残していくこの仕事に誇りとやりがいを感じ、今まで続けてきたように思います。他の職人さん同様後継者不足は深刻な問題ですが、アプローチの仕方を時代にあわせて臨機応変に変化させながら、人形づくりに対する心だけはどこまでも変わらないものとして伝えていきたいと思いますね。

 また、最近「節句」に対する本来の意味や思いなどを伝えていける「本当の人形職人」がいなくなってしまい、「節句」そのものが形だけのことになったり、それ自体意味のないものとして捉えられてしまっていることをとても残念に思いますね。「節句」に人形を飾ることの背景にある、昔から受け継がれてきた“思い”を子供達に語り伝えていくことの大切さをもう一度思いかえしてもらい、節句の日は親子でゆっくりと語り合うひとときをもってもらいたい・・・・そんな思いを込めてこれからも人形作りに取り組んでいきたいと思っています。


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