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 伝統工芸や地場産業に携わるみなさまにお話をうかがう新コーナーです。



石嶽石工業有限会社 代表取締役
伝統工芸士 楠名嶽済 氏

 石工の仕事に携わって45年になります。技の上達に全てを注ぎ込んだ親方絶対の修業時代。技が全ての厳しい世界だったけど、親方との深いつきあいを通して、技にも勝る様々なものを学びました。その後「作ることだけに専念する職人よりも親方のほうがもうかるな」という父の言葉をきっかけに、石製品の製造・販売を始め30年になります。

 昭和54年に伝統工芸士の認定を受け、現在は9名の弟子をもちながら、工学院で左官や石工の見習達に教鞭をとったりもしています。生徒や弟子達への接し方はいつも「けんか型」。真正面からぶつかっていって相手の内面をひきだし、挑発してやる気にさせるのが私のやり方です。石工業は伝統工芸だけれど、使う道具もだいぶ変わりましたし、昔のような親方絶対を貫き通していくわけにはいきません。しかし人から人へ技が受け継がれていくという点においては何も変わっていないので、時代にあった接し方をしながら伝統工芸に対する思いを後世に伝えていきたいと思っています。

 業界的には、規制緩和により中国から安い石が輸入され、日本の石工業は大変厳しい状況ですが、だからこそ今までの常識が通じないおもしろい時代だと感じています。今後は職人とお客さんの間にある距離を縮め、石屋のほうから積極的にアピールし、親近感を抱いていただけるような試みをしたいですね。岡崎の石を伝統工芸という重々しいものではなく、もっと身近なものとして生活の中に取り入れていってもらえたらと思っています。またその一方で伝統的な岡崎の灯篭を作りつづけ、これからも一生懸命にわがままに仕事をしていきたいですね。




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