「外国人雇用と共生を考える」シンポジウム

【司会・山本】 本日は「外国人雇用と共生を考える」シンポジウムにご出席いただきまことにありがとうございます。平素は本協議会事業に格別のご理解ご協力を賜り厚くお礼を申しあげます。開会に先立ちまして本日のスケジュールについてご説明させていただきます。お手元の資料にございますように第一部はパネルディスカッションといたします。第二部は左にご用意しております懇談会場にお席をお移りいただき、懇談会を開催いたします。それでは只今より外国人雇用と共生を考えるシンポジウムを開催させていただきます。本日の進行をさせていただきます、岡崎商工会議所の山本と申します。よろしくお願いいたします。初めに主催者よりご挨拶をいたします。岡崎地区外国人雇用管理推進協議会、同前会長より開会のご挨拶を申しあげます。同前会長よろしくお願いいたします。

【同前会長】 皆さんこんにちは。会長の同前です。

サッカーのワールドカップも終わり、当初は経済に対する波及効果を論じ合っていましたが、そんなことなどは問題にならないほど、日本に大きい感動を残してくれました。そしてブラジルが優勝しました。スタンドのブラジル人が、感動で涙を流しながら歓喜している様子や、日本に滞在するブラジル人の大変な盛り上がりがテレビに映しだされていました。日本にいて自国の優勝を目の当たりにする事ができた彼らにとって、今回のワールドカップは特別のものであったと思います。

 さてわが国は、小泉内閣の下で、構造改革に懸命に取り組んでいるものの、景気は一向に回復の兆しが見えません。5%を超える高い完全失業率が長期化していて、社会問題にまでなっています。日本人自体の雇用確保が大変な状況の中で、外国人の雇用まで考えられないのが現状ですが、岡崎における外国人労働者は、増加しているようですし、国内の外国人労働者も増加の傾向にあります。さらに外国人研修生の受入れも継続しています。研修生の大半が単純労働の職場に流れているといわれております。その一部が不法就労、不法滞在に発展していると思われます。日本に滞在する外国人労働者が職を失ったら一体どうして生活をして行くのか、犯罪に走らなければと願うばかりです。

 わが国は、少子化により、若年労働力は今後、急激に、減少してまいります。20年後には50万人程度の労働力不足が見込まれています。外国人の本格的な導入を検討する時期に来ていると思います。そのためにも今から環境整備を考えておくことが必要であります。

 本協議会は平成4年より、主として日系人雇用の適正化に取組んでまいりました。この10年の蓄積されたノウハウが、来るべき雇用の多国籍化時代に、大いに寄与しうるものと考えています。今後の展開は、将来外国人労働者の増加を見込んで、外国人との共生のための環境整備と、そのための企業間のネットワーク作りに、取り組んで行きたいと思っています。

ただ今より、丹野先生にコーディネーターをお願いして、外国人雇用に関連する専門の諸先生方をパネリストにお迎えして、「外国人雇用と共生を考える」と題してシンポジウムを開催いたします。各界でご活躍の皆様から、多くの事をご教示いただけるものと存じますので、ご参加の皆様には最後までご静聴いただけるようお願いいたしまして、開会のご挨拶といたします。

【司会・山本】 ありがとうございました。それでは早速ですが第一部のパネルディスカッションを始めます。テーマは「外国人雇用と共生を考える」となっております。最初にパネリストの方々をご紹介させていただきます。財団法人産業雇用サービスセンター愛知事務所副所長、名古屋日系人雇用サービスセンター担当、伊藤勝夫様です。お話いただく内容は「外国人の雇用相談の現状について」です。続きまして財団法人豊田市国際交流協会事務局次長、成田英明様です。お話いただく内容は「豊田市での活動について」です。続きまして岡崎市役所市長公室教えてくれません課市民相談班、山本幸子様です。山本様は30年間ブラジルで移民生活をなさった後、日本に戻り10年間ポルトガル語の相談員として活躍されておられます。お話いただく内容は「岡崎での窓口相談の現状について」です。続きまして本協議会会員であり、役員であります株式会社大喜プラスチックス工業所代表取締役社長、井上登永様です。お話いただく内容は「岡崎地区雇用企業の事例紹介と成果」についてです。以上4名の皆様です。そしてコーディネーターには一橋大学大学院社会学研究科博士課程、日本学術振興会特別研究員を経て、現在東京都立大学講師であります丹野清人様にお願いをいたしております。それではここからはコーディネーターの丹野様にお任せいたします。丹野様よろしくお願いいたします。

【丹野】 では私の方からまず最初に簡単に豊田市及び岡崎市、この界隈についての外国人雇用、とりわけこの地域の日系人の雇用の状況について簡単に説明させてもらいまして、そこから将来の問題としてどういう事があるのかという事について問題提起をさせていただきたいと思います。私の目の前に座っている人達や横に居る人達の中には、随分前から知り合いというか、私が迷惑をかけてしまったような人達がおられまして、ちょっとやりづらいと思っているところもあります。中には私が企業調査の時に訪ねて行っていろいろと怒られた企業さんもあります。2000年から2001年にかけて幸いな事に、私は豊田市から岡崎市にかけて随分と事業所回り、事業所で外国人をどういうふうに雇用しているのかという事を聞く機会を与えていただきました。そうしたところの結果から、今の外国人雇用というものについて簡単に説明したいと思います。

端的に言って外国人雇用については豊田市も岡崎市も同じ傾向があると思います。どういう事かというと外国人雇用が事業所の中に入ってくるようになったのは両市とも基本的には90年、要するに入管法の改正の時期に一気にこの辺りの各事業所において外国人が雇われるという事が広がりました。当初は比較的多くが直接雇用という形で受け入れておりました。一つには間接雇用に関する不安感があったという事で、要するにブローカーを使うという事に対する事業所サイドの不安感があったという事と、もう一つがやはりブローカーを入れるよりも自分の所で確実に雇用契約し、入れた方が逃げられないと同時に、長期的に働いてもらいたいからこそ直接雇用にしたという色合いがあります。

ところが、近年は基本的には直接雇用よりもむしろ間接雇用の方が圧倒的に増えてしまったという現状があります。それと同時に直接雇用から間接雇用に代わるという事は、一つの事業所あたりで見た時の外国人労働力の数、これが減っているんです。昔ほど一つの事業所で多くの外国人を雇用している事業所というのが極めて少なくなってしまっている。一つの事業所で働く労働者は少ないんだけれどもあちこちに散らばっているというような感じになってという事を想像してみて下さい。そういうところから見ていくと、どういう事が見えてくるのかという事を述べさせていただきます。

重要なのは、やはり一番増えた90年の入管法の時になぜ入れたのかということです。これは完全に人手不足、絶対的な人手不足に対応するためだったんです。要するに日本人の労働力はもう手に入らない。それだけれども工場は稼動させなければいけない、人手は必ず必要になる。その必要な労働力としてまず外国人労働者、とりわけ合法的な日系人労働力を用いたのです。関東の方だと比較的資格外の労働者、不法と言われる人達も多いんですけれども、西三河地域は自動車産業が発達している事もあって生産性が高いんですね。生産性が高いイコール賃金支払い能力も高いという事がありまして、合法就労者を十分雇いうるという環境下にあったゆえに、比較的多くの日系ブラジル人が入ってくる事になりました。

バブル経済が弾けてしまいますと、この豊かな西三河地域ですら雇用不安はそれなりにあるんですね。夫の仕事も随分と賃金が抑えられてしまったり、出向させられてしまったり、場合によってはリストラに合ってしまったり、この地域ですら雇用不安が存在する。バブルの時代には手に入らなかったパート労働力とか、そういうものが住宅密集地、要するに住宅から遠くないような地域にある工場、岡崎市なんかその典型なんですけれども、岡崎から豊田市の南部に至るよう地域にあるような工場だと比較的パート労働力が手に入りやすくなってきています。そういった事もあって外国人に必ずしも頼らなくてもいい。昔は外国人以外に頼る労働力が無かったんですけれども、最近だとそうやって主婦のパートタイマーも手に入るし、失業率が上がってくれば当然ですね。今まで手に入りにくかった新卒者ですら十分下請けレベルでも手に入れる事ができてくるようになってくるし、そうすると外国人は絶対的に必要な労働力でなくっています。パートとかアルバイトに加えて、最近だと雇用延長とか定年延長、再雇用制という事によって高齢者が工場の中で残り続ける。また他所の工場に移っていくという事がありますから、そういう高齢者を集めた上で更に集まらない労働者の部分として外国人を用いる。そういう形に変わってしまった訳です。

このように外国人労働力は非常に不安定化している訳なんですけれども、それは一方で豊田市もそうであるし、岡崎もそうだと思うんですけれど、そういう労働力を必要とするということがある種の経済環境の反映をしていまして、どういう事かというと、全般的に工場の生産ボリューム自体は落ちているんです。その生産ボリュームが落ちている中で、どうやって工場が生き残っていくのかというと、それはもう簡単な事で需要を逃さない、即座に対応する。要するに注文が舞い込んできたらそれに対してすぐ生産活動ができるという形を通して、元々トヨタ自動車さんを始め、ここはジャストインタイムが徹底した場所だった訳ですけれども、それが更に徹底されるような形で何とか各工場が生き残るという形になっています。そうすると間接雇用が、工場あたりの労働力自体は減ってはきているんですけれども、この地域の工場にとって必要な労働力に一方ではなっている。それから直接雇用の企業が減っていく一方で間接雇用が増えて、直接雇用が減ったから外国人労働者の意味がこの地域の工場にとって無くなってしまったのかというとそんな事はなくて、むしろその間接雇用がある事によって需要に即座に対応できるような生産活動ができるという意味では間接雇用の労働力はかえって拡がっているんですね。そういう事を反映しているんだと思うんですが、直接雇用の工場とか間接雇用で働いている工場の数自体は岡崎市にしろ豊田市にしろ減っているにもかかわらず、外国人の住民の数だけが増えていってしまう。そこに最終的に工場の側の論理と、地域社会の論理がどうしてもせめぎ合ってしまうような形にならざるを得なくなっているのですね。この点をどうするのか、もしくはその点についてどうやって地域の行政ないしは企業の方が向かい合っていくのかという事が今突きつけられてしまっている課題だと私は思います。そういう事を、まず考えていく場として今日のこの会議を使っていただきたいというのが私からの提案です。それは同時に直接雇用という事で、こちらの外国人雇用管理推進協議会というのが始まった訳ですが、間接雇用がこれだけ多くなってくると、ある種の社会的なニーズとちょっとズレてきているんですね。そのニーズがズレた時に次に何をするのかという事についての考える第一歩にしていただきたいなというのが私からのまず提案です。私からの現状についての説明という事と問題提起というのはこれくらいにしまして、次にそのパネリストの方々からそれぞれお話をしていただきたいなと思います。まず伊藤さんの方から「外国人の労働相談の現状について」という事でお願いいたします。

【伊藤】 伊藤でございます、よろしくお願いいたします。私の方からはテーマが「外国人の労働相談の現状」ということになっておりますが、せっかくの機会ですので名古屋日系人雇用サービスセンターの概略、どうしてできたのか、どういう事をやっているのか、そしてその内容を説明させていただきます。日系人を雇用するにあたっての資料「日系人を雇用するにあたって 日系人雇用サービスセンター」の4、5ページを開いていただきますと分かりやすいかと思います。私も大変申し訳ないんですけれども、行政に居た時にこの日系人雇用サービスセンターがどのような仕事をしているかあまり判りませんでした。ですから皆様方に少し分かりづらいんではないかと思っています。先程丹野先生からお話がありましたように外国人の方が大勢見えるようになり、入管法が変わりまして日系人の方が色々な仕事ができるようになりました。そこにブローカーとかが入ってきて、非常に日本の中で問題が起きました。「日本人は嘘をつかない」とか「正直だ」とかいうのが、もう完全に騙されたという事になってしまいます。というような事で、就労経路の適正化を図るために日系人雇用サービスセンターができました。通常はニッケイズと言っておりますが、行政の安定所の窓口と産業雇用安定センターの窓口、二つが一緒になっています。安定所の方は求人受理とか職業相談・紹介を行っています。産業雇用センターの方が色んな労働問題、どちらかと言いますと苦情相談とか、どうしたら良いのかの相談をしています。ポルトガル語とスペイン語の通訳さんが常時おります。安定所の方と私どもと共通で行っており、常時二人ぐらいづつ配置しており、一人は職業相談、一人は電話番をしています。昼休みもやっております。昼当番のポルトガル語とスペイン語の通訳の方と私どものカウンセラーで電話の相談も行っています。特に昼休みは色々な苦情相談が多くあります。安定所と産業センターが一緒になって就職からその後の労働相談までを行っています。では、産業安定センターは何かと言いますと5ページの下の方に書いてありますけれど、今は厚生労働省になっておりますけど、産業間の失業なき労働力の移動ということが重点になっております。出向とかの受入れと送り出しの仕事を行っています。もう一つは厚生労働省の委託事業として日系人の就業適正化の事業を行っています。平成6年からですがブラジルの国に日伯雇用サービスセンターができました。現在は求人が非常に少なくなっており連絡求人の送付が無いような厳しい現状になっております。それでは安定所の取扱い状況について説明します。13年度ですが求職の相談が6800件ぐらいありまして、そのうち電話相談が非常に多い状況ですが、新規求職者が1117人、再来者が555名で、大体月平均しますと新規と再来を合わせると140人ぐらいの方がお見えになっています。ブラジル人の方が約67%、ペルー人の方が約18%ぐらいであとはその他です。サービスセンターは東京と名古屋の2ヶ所あります。ですから長野県・山梨県から北の方が東京センターの管轄であとの西側が全部名古屋センターの管轄で求職の電話等の相談も行っています。来所される求職者の方については愛知県内が約80%ぐらい、それから岐阜が8%、三重5%、合わせますと3県で93%にもなります。来所できない方は電話相談になります。次に求人はどうかと言いますと非常に減りまして、昨年620件で月平均51件ぐらいしかありません。そのうち愛知145、三重101、愛知23%、三重16%になっており、東京センターからも80人の連絡求人をいただいております。ただ景気が悪いからなかなか求人がいただけない状況です。紹介については414件で月平均35件ぐらい、就職は月平均10件ぐらいあります。求職者の相談については電話が70%、来所が30%になっています。それから私どもの相談内容では労働相談と職業生活相談があります。労働相談が2900件で月に約240件の相談があります。相談の内容は景気の悪さを反映して、解雇の相談が非常に多く全体の20%あり、次に雇用保険が16%、それから労災保険の内容の相談が14%あります。次に職業生活の相談ですが、色々な相談がございますが4400件で、月平均360件ぐらいの相談がございます。これは手続の仕方とか、何処へ行ったらいいのかという各機関の問い合わせが全体の26%、次に雇用関係の情報、就職先があるか無いかとい問い合わせが24%、社会保険関係が12%になっています。電話での相談が90%ぐらいで来所される方は10%になっています。1日平均しますと30件程ありますので、来所される方は3〜4名ですが、非常に相談の時間がかかります。相談事例の内容で多いのは、先程お話いたしました解雇ですが、「仕事がなく無ったから暫く待ってくれ」と言われたとか、「明日から来なくてもいいよ」と言われたとか、突然解雇されたということがあります。本人の側にも問題がありまして、会社の方によく聞いてみると、本人が無断欠勤をしたという事が非常に多いです。それから勤務態度が良くないとか、同僚と喧嘩したということも多いです。私どもの方へ日系人の方が見えますがなかなか言葉が喋れる方が少ないという事もありますが、休暇についても明日休みを下さいと一言言えば良いんですが、有給休暇のことが判らなく黙って休んでしまう事が多いんです。こういう理由が解雇につながっています。次に賃金の問題ですが、これは控除額に色々不満がございます。最初からきちんと本人に説明していただければいいのですが、この控除は何だというような事が判らないような事があります。一番問題は退職時に精算される時の金額です。退職しても給料が貰えないという事があります。宿舎に入っていて、それの精算に時間がかかります。また、アパートの修理代とか清掃代、光熱水道代とかが理解されていない事が多く、敷金についてもなかなか理解されていないんです。こういった控除額の不満がございます。最近ですと住民税の相談で、今住んでいない前の市役所から通知が来ているがどうしたらよいか、住民税は1月1日現在に住んでいる市に納付することを説明してもなかなか理解していただけない事もあります。それから時間外とか深夜の割増賃金の関係で計算の方法が判らない相談が多いです。労災関係では、労災保険はどういうものが適用になるか、指先を少し切ったとか、曲がらないとかという小さな事故の相談があります。その場合の受給の手続きに関すること、労災を適用していないけど国民健康保険と会社での負担など、業務上労災になるのか色々相談がございますけれども、私どもは権限がございませんので、両者の話を聞いて本人さんにお話をし、もう一度会社に相談して下さいというような事でお話をしております。どうしても話ができなければ監督署さんで相談をするように話をしています。次に雇用保険の問題ですが、雇用保険に加入していないという相談と、受給に関する手続きの相談が多いです。これにつきましてはハローワークの場所と通訳さんがいる場合は勤務している時間帯をお教えします。中には勤務月が6ヶ月以上が該当するお話をしましたら、たまたま7ヶ月勤めて退職したのに受け付けてもらえなかった。そこで離職票持ってみえました。14日以上勤務が6ヶ月以上ないと該当しないのですが、2ヶ月間10日しか勤務していないため駄目であったのですが、ただその場合に前に勤めた所があれば通算になる制度がありますので、前の離職票を持って再度安定所で相談して下さいと言いました。それから加入の手続きのやり方の相談が非常に多いです。次に社会保険の問題ですけれども、社会保険はなかなか日系の方はお金が高いから入りたくないような事を言ってみえますけれども、健康保険の場合、病気になったら必要になってきます。又年金についても今は脱会一時金という制度があります。そのような事がありますので、必ず入るようにとお話をしています。定住者とか3年とかだんだん長く住むようになってまいりますので、社会保険の加入という事は必要になってきます。その他としては税金の問題がございます。これは確か1年以上居住される方は普通のように税金が引かれると思いますが、1年以内の人は非居住者となり2割の税金が取られますから非常に大きくなりますので、もし税金の件で何かありましたら税務署の方で確認をしてくださいと言っています。又ブラジルから出国する時に、非居住者の届けをしてありますと日本とブラジルの二重課税にはなりませんし、帰国する時に認証済み源泉徴収票を持っていれば日本で働いてお金をもらって税金を納めたことになり二重課税はされません。その他では、在留資格更新中のものがいつ頃更新できるかを入管に聞いてほしいとか、永住権を取りたいとか、また最近多くなっているのが交通事故です。交通事故は非常に多くなってきております。任意保険を掛けていればいいんですが掛けてない事がございます。これについては色々聞いても日系人の方はなかなか自分の不利な事を言わない事があります。会社の方に色々お聞きし、どうしたら良いかを本人にお話をしているような状況です。住宅の問題もございます。公営住宅に入る方法はどうかとかの相談がございます。私どもとしてはご本人に色々な窓口の制度とか仕組みとかの情報を提供をしています。そして通訳の方を通じて支援するという事が内容で、本人に直接関係機関に行っていただくようにしています。その場合でも言葉が通じないので通訳さんが必要なら電話して下さいというようなことは言っています。相談にみえる日系人の方と相手方となる事業所の方に色々法律とか制度の説明をして事情を伝えたりして、本人の言い分を整理したうえで、いわゆる中立的な立場で助言をしていくのが私どもの役割になっております。時間もまいりましたので以上で終わらせていただきます。

【丹野】 どうもありがとうございました。やはり制度を巡る問題というのがどうしても日本社会と日系人労働者との間の中で生じているということがわかってくるかと思うんですけれども、次に豊田市の方の成田さんの方から「豊田市から見た外国人労働者」みたいな形になるかと思うんですがよろしくお願いします。

【成田】1.はじめに 先程、司会の方から「豊田市での活動について」というテーマで紹介いただきましたが、このシンポジウムの日が近づくに従って色々考えました。視点として本日のシンポジウム参加者の方は企業の方が多いのではないかという事で、少し大上段に振りかぶっていますがテーマを「ものづくり産業を支える外国人労働者」に変えました。本日、社会学のそれも主に労働分野で活躍されている丹野先生に論戦を挑むつもりはありませんが、参加者の共通認識として資料紹介させていただきます。

 最初に、本日参加の皆様に簡単なアンケートに挙手で答えていただきます。本日のテーマのように「『ものづくり産業』は外国人労働者に支えられている」と実感としている方は挙手願います。少ないので「実感は無い」と理解しておきます。それからもう一つ、日本は資源の少ない国ですから、製造業は大切だと思っていますが、製造業の空洞化について色々新聞等に出ています。三つの答えを用意しています。「空洞化は現状のままあまり進まないだろう」が1番。2番は「緩やかにもう少し進むだろう」。3番は「急激にもっと進んで行くだろう」という選択肢を用意しました。皆さんの感覚で結構ですが、1番の「現状のままだろう」と思う方挙手願います。ありませんか。2番目の「緩やかに進んで行く」と思う方お見えですか。ありがとうございます。3番目ですが「急激にもっと進んで行くだろう」という方。4対6くらい位で2番より3番の方が少し多いかなという所です。ありがとうございました。

2.製造業の空洞化延伸に寄与する外国人労働者 資料1に国勢調査結果から見たものを出しています。【図1 都道府県別就業者総数(15歳以上)に占める製造業就業者の割合】、これは従業地ではなくて住んでいる所の数字です。最初に統計が出るのは、住んでいる所の数字しか出て来ないのでその数字です。それと25%以上と、20〜25%の凡例が一緒になって判別できません。25%以上の九つの県名だけ申しあげます。群馬県、栃木県、富山県、福井県、静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、滋賀県の九県が実際には25%以上のランクになります。その他の少し黒い所は二番目の20%〜25%未満という事だけ説明しておきます。丹野先生から色々話が出ましたが、このデータから見ると、まず“製造業の空洞化延伸に寄与する外国人労働者”という事が言えると思います。国勢調査結果から先程の製造業就業者比率が25%以上という、いわゆる『ものづくり集積地』を【図2 都道府県別就業者総数(15歳以上)に占める外国人就業者の割合】に見ると、外国人就業者比率がだいたい1.5%を超えています。全県ではありませんがだいたい1.5%を超えていて非常に相関性が高いと言えます。それから、就業者総数6,298万人に占める外国人の割合の全国平均は1.09%ですが、図2の『ものづくり集積地』では1.6%から1.8%と非常に高い数字になっています。この事から何が言えるかというと、“既に日本の『ものづくり産業』が相当程度外国人労働力に依存せざるを得ない状況が明らか”です。

 外国人就業者総数68万5千人の内、製造業就業者が24万8千人、36.2%と最大のシェアを占めています。平成7年の国勢調査、5年前の調査からの変化を見ると、外国人就業者は8万1千人増加していますが、その内訳は製造業で4万7千人増と圧倒的です。要するに“製造業が外国人労働者拡大の牽引車”になっているという事が言えます。それからもう一点、日本の産業別就業者の趨勢ですが、製造業では5年間で133万人減っており、産業大分類の中で最大の減少幅です。それから資料の2ページ目に付けてありますが、経済産業省の定期報告『地域経済の動向』、これは今年の2月のものですが、コスト競争激化を背景とした製造業企業の海外移転が加速している事が報告されていて、国勢調査結果を裏付けています。この事から“『ものづくり産業』に外国人労働者が浸透している現状を認識し、生活者としての環境整備が重要である”という事を提言します。

3.経済団体からの外国人労働者受け入れ拡大意見 続いて経済団体からの外国人労働者受け入れ拡大の代表的意見を二つ紹介します。

 現在合併していますが、経団連会長が01年7月の夏季フォーラムにて「世界の優秀な人材に愛され、住んでもらえる国にしなければならない。危険な仕事だけでなく、外国人を雇用する余地はある」と発言しています。

 それから、当時の日経連会長が、01年8月の経営トップセミナーにて「完全失業率が5%近いにもかかわらず、いわゆる危険、汚い、きついと言われる3K職場で働こうとする日本人は少ない。日本人が働かないなら外国人に頼むしかない」と述べ、単純労働でも外国人の受け入れを認めるべきだとの考えを示しています。

4.空洞化と国際分業 01年7月にT社社長が「合理化やコストダウンも、常に外国メーカーが頭にある。彼らより、コストが高くなったら、外国で造らざるを得ない」と発言しています。現在、中部経済産業局に『中部地域経済産業の将来展望に関する検討委員会』がありますが、その中では“中部地域の自動車産業、輸送機械が全て海外移転した場合に全国各地域に与える影響”も試算されています。

 私の経歴に掲載しましたが、01年11月末〜12月初旬のタイスタディーツアー時にチェンマイ大学の先生の話を聞く事ができました。その先生は「中国は、低賃金で技術力もあり、WTO加盟は大変な脅威である」という事を言われました。タイT社も訪問させていただきましたが、人件費でなく部品コストですが、タイT社からは「部品コストレベルでは、日本を100とすると、タイ70、中国50である。タイの部品メーカーも中国にシフトしている」ことをお聞きしました。日本から出ていって、再度、その現地から違う国に動いています。そういう国際分業の一例として紹介させていただきました。

5.外国人労働者の生活保障 外国人労働者の生活保障、この件で少し事例を紹介します。私ども豊田市の保見団地で右翼団体と外国人との衝突という事件がありました。その事を「TIME」紙が99年8月9日号に取りあげました。その記事の中で、ある教師の「ブラジル人は単に労働力として受け入れられてきたのであった。政府は少しも彼らの人権のことを考えていない」発言が掲載されました。外国では豊田市発の情報でも、TOYOTAというと全部T社に結び付いてしまいます。100%とは言いませんが、私どもはそういった意味でこの記事の影響を非常に憂慮しました。

 00年1月に外務省で開催された中南米12か国大使会議の発言を一つだけ紹介します。駐日ペルー大使が「多くの日系人が来日している。日本にとって最大の国際交流事業であるが、不満を持って帰国する人が多い」と発言したことを内々に聞いています。

 今からお話しする事例は、その内容でなく最後の所を汲み取っていただきたいと思います。M社は98年、子会社の米国M製造社が提訴されたセクハラ訴訟で問題発覚後の対応が遅れ、和解金は3,400万ドル、約49億円に膨らんだという事で危機管理に失敗した場合のコストがいかに高くつくかを示す結果となった事例として挙げさせていただきました。

 最後にA元国連事務次長が、01年10月に新城市で行われたシンポジウムの中で「人権に関して、国連・欧米は軍事力を持ってして介入することは止むをえない考えである」事を紹介されました。

6.企業・産業界の取組み このような動きに対して、企業・産業界の取り組みにどんなものがあるかという事でお話します。先程のT社は、99年9月に在日ブラジル人自動車整備工養成コースを発足させました。3年間の期限でしたが、次期02年9月からも延長していただける事になりました。それから豊田商工会議所では国際交流・多文化共生事業特別委員会を発足させ、色々対応していくと聞いています。

7.外国人労働者雇用主(直接・間接を問わず)企業へのお願い 本題ですが、外国人労働者雇用主に、これは直接間接を問わずお願いしたい事があります。外国人労働者が、定着できたというか定住してきたというか、そういう事で彼らを労働力でなく人間として見なければいけないという事です。代表的な資料として二つ、3ページに示しています。【図3 豊田市外国人健康保険加入状況】、これは推計ですが、平成12年12月末の豊田市における外国人国保加入率は約47%です。社会保険に約8%入っていて、全体の45%が健康保険未加入者という事です。勿論この中の一部には海外旅行傷害保険に入っている方もいますが、相談実例から言いますと家族特に子どもは、放置されたままかなと思っています。

 それから【表1 豊田市学齢対象外国人及び就学者数】です。01年5月1日現在の外国人登録者ですが総計776人の内、公立学校に行っているのが494人です。その他の学校としてブラジル人学校とか塾へ行っている子どもがいまして、全く学校に行っていない子どもが約95名いると推計しています。

 この代表的な二つの事例を踏まえ、企業に対して色々お願いがあります。まず大きくは雇用基準の整備です。実態調査、色々な改善指導、社内啓発、外国人労働者の保険医療の実態を認識する場の確保をお願いします。子どものいる家庭の長時間労働の制限と雇用主理解の促進などをお願いします。それから雇用対策として、外国人の学卒者受け入れと彼らをケアする日本人指導者の新規採用、そんな事もお願いします。

 現状、私どもの協会では毎週約300人の日本語を勉強する外国人が来ます。現在、週に10人位新規受講希望者が来ますが、「学期が始まっているので次の学期まで待ってください」と言って、彼らにとっては厳しい状況ですが待ってもらう状況も起きています。

 本日の読売新聞にも出ていましたが、集住化の回避です。これもお願いします。豊田市の保見団地、約9,500人の住人の内3,500人が外国人です。その約9割がブラジル人と言われています。外国人が集住する事によって色々な問題が顕在化しています。例えば浜松市は、豊田市より外国人が多く、ブラジル人も多いのですが、集住化していないために、問題の顕在化というのは保見団地程ではありません。そんな事で、本当に共生していこうと思う程、集住化については皆さんで知恵を出して考えていただきたいと思います。少し時間が長くなりましたが以上で終わります。ありがとうございました。

【丹野】 ほぼ割り当てられていた時間の倍を使っていただきまして、その分、コアな事まで出していただきました。とにかく要するに生活者として受け入れる環境整備をどうにかしてほしいという事が基本的なお話だったんだと思います。次いで山本さんのほうから岡崎市の方の相談の内容についてお願いします。

【山本】 岡崎市役所での外国人相談で気のついた事を2、3挙げさせていただきます。私が10年前に岡崎市役所に採用された時には外国人の数はだいたい160人程度でした。現在では3000人を超えております。そのために色々な相談も複雑になっております。最初は外国人登録についての相談が多かったのですが、最近は日本に定住するための永住権についての相談が多くなりました。それと又、先生方のおっしゃいました住宅問題です。その住宅問題で県営住宅、市営住宅の申し込みについて、企業では雇用期間は寮に置いていただけますけれども、雇用期間が切れますと、即住宅を明け渡してほしいという相談が出ます。また、家族を日本に呼ぶために公営住宅に入りたいという相談も多くなりました。そしてまた現在2001年までは、ブラジル人同士の結婚についてはブラジル名古屋領事館発行の独身証明書といいますか、婚姻要件具備証明書を持ってこれば簡単に市役所でも婚姻届けができるようになっておりました。しかし現在は、今年の3月か2月だったと思いますが、ブラジル領事館は婚姻要件具備証明書を発行しなくなりました。本国からその独身証明書を取り寄せます。さらにブラジルの日本領事館で認証を受けます。ブラジルでは市役所ではなくてカルトリオと言いまして、登記所で出生証明書、及び婚姻証明書等を交付しますが、その登記所の証明も必要になりました。外国人同士の婚姻届が、いつもですと大体1ヶ月に2、3件ありましたのが現在では全く婚姻届が提出されなくなりました。離婚についても外国人の方は日本で簡単に離婚できるのではないかという相談もありますが、結局はブラジルの法律に従って離婚届も提出されますので、それはできません。ブラジルの方も昔はカトリックの教えで離婚できなかったのです。それが今では簡単に離婚できるような現状になりまして、大体1年、2年待てば離婚が成立するようになりました。日本に在住している外国人は簡単に岡崎市役所で婚姻届もできるのだから離婚届も日本で成立できるのではないかという相談もあります。次に学校の問題です。豊田の方にはブラジル学校がございまして、岡崎の方からも通っている子供達がおりますが、今の雇用の現状でブラジル学校は月に4万から5万円かかります。それで岡崎でもブラジル学校を塾として開設してもらえないかという問題もございました。それもブラジル政府の認証を受けて、そしてまたブラジルへ帰国してもそのままそのブラジル学校で、ブラジル本国で通用するように転校したい要望でしたが、それも立ち消えになりました。そういう問題もあります。ブラジル人にとって今一番大きな問題は、国民健康保険と雇用保険の問題です。ブラジルには国民健康保険、雇用保険の保険制度がないものですから、皆さんそれが理解できないのです。入るのは簡単なのですが、その払う仕組みを説明してもなかなか理解してもらえません。大体岡崎でも40%の人が国民健康保険か社会保険に加入していると思います。その他の人達は海外保険という保険を利用しております。海外保険と言いますと、病気になりまして治療を受けます。そして領収書を持っていって2ヶ月後には現金で本人に支払われるような仕組みになっているようです。今岡崎市では1歳から4歳まで乳児医療を受ける事ができます。国民健康保険へ加入している人、社会保険に加入している人は、そのために、即加入したいという人が多いのですが、その仕組みが判らなくて説明するのに戸惑っております。そしてまた最近ではゴミ問題です。ブラジルは大国ということもあってかゴミ問題というのをあまり聞いたことがないのです。岡崎でも、4月からゴミ問題で今第二の保見団地になるのではないかと思われる程、本宿の県営住宅にはブラジル人の方がたくさん住んでおります。そこにも二回、三回と下手なポルトガル語ですが説明に行かせてもらいました。今は岡崎市役所ではポルトガル語の説明書、又英語の説明書等が出ています。説明をしてほしいという相談も多い今日この頃です。思いついた事を簡単に説明させていただきました。

【丹野】 どうもありがとうございました。本当に日系のブラジル人の方達の生活上の問題というものがどういう事なのかが具体的に良く判るかと思うのですけれども、次にあの雇用管理推進協議会の方から、実際に雇用された経験のある企業としてお願いします。

【井上】 皆さんこんにちは。高いところから失礼いたします。先程ご紹介いただきました岡崎地区外国人雇用管理推進協議会で理事を務めています、大喜プラスチックス工業所の井上でございます。不慣れですが雇用企業の事例紹介と成果についてお話させていただきます。お手元の資料2に沿って説明させていただきます。平成2年の6月に皆さんご存知でしょうが、入国管理法改正を契機に日系人の雇用を考える企業が増えてまいりました。当社もその一つでしたが、岡崎商工会議所を中心に受け入れ企業と行政の懇談会がきっかけで当協議会は平成4年3月に設立いたしました。当初は外国人の適正雇用を目的に活動してまいりました。当協議会としては、商工会議所を事務局として本日ご出席の行政の皆様方と私ども企業との一体となった外国人雇用に対する取り組みをすすめた経緯がありました。当社の紹介をさせていただきます。当社はプラスチック製品の製造加工を中心としてまして、主に自動車部品を扱っております。社員さんパートさん含めまして70名、そのうち日系を含めブラジル人の方は現在4名雇用しております。そして仕事の内容としてはプラスチックの成形工程の方で仕事をしていただいております。次に当社の雇用展開及び事例についてお話させていただきます。今日ここの場で心当たりのある企業さんもいらっしゃるのではないかと思われますが、日系人雇用初期の頃は多分に漏れず夜逃げが発生し、私どもは困った時期がありました。名古屋空港に来日してその航空代金を例えば30万円の内10万円を会社の方で前貸ししたような形のところ、ある日突然一ヶ月も経たないうちにいなくなる。そんなような事が3回ほどございました。こちらの日系ブラジル人の雇用背景には、習慣とか慣習が常に付いて廻っているんだなということを痛感しています。一つは家族至上主義という言葉です。例えば働いている本人の家族が病気になりました。そうしたら病気にもなっていない本人が、仕事を欠勤して病院に一緒に連れ添っていきます。そしてその欠勤した分、生産に影響した事も多々ありました。又使用されている言語がポルトガル語という事から、ラテン系の陽気で情熱的な部分、会社が怒ったりした場合日系人が激昂するという側面もある事に会社として気付いて理解をする努力もしてきました。ご存知でしょうが契約社会と割り切った部分、個人主義であるという事です。自分を少しでも評価する、しいて言えば少しでも給料、条件等が高い会社へ転職するという傾向がありました。勿論休日出勤とか残業とかの依頼に対しては、割増さえ払えば喜んで受けるというような所がありました。そのあたりの割り切りが国民性としてあったんだなと思いました。そして色々試行錯誤した中で、当社の雇用での条件出しのやり方として、例えば時間給等は一年目はいくら、二年目はいくら、三年目はいくらというふうに、同一労働同一賃金の部分で、年功序列を加味した形で個別に契約するようにして現在に至っております。言葉とか地域生活についてですが、先程山本さんがおっしゃっていた分別のゴミ出しという部分から始まってます。あと地域清掃等の町内行事への参加も、会社から本人達に促して参加するように進めてまいりました。本人達は群馬とか浜松とか遠方の方にも、まめに往来があるという事です。土日休みの時に、そちらの方の友人の所に車で一泊がかりで行き来をしたり、我々が思っている以上に情報が豊富であります。まあ言い方を変えれば彼らは日本の社会に対して世間知らずという事は当てはまらないと考えてよろしいと思います。そしてもう1点言葉の点なのですが、やはり通訳をした場合にニュアンスが違う形で伝わっている事がありました。そのうち例の一つに、市民税の支払い等で払うべきという旨で会社がお話した場合でも、その通訳を介した本人の伝わり方として、払わなくても良いと解釈して、あとでまた説明に苦労したといった事もございました。あとまとめとして、少子化とか高齢化といった時代になってきました。これは間違いございませんが、やはり外国人雇用に対して色々と失敗を繰り返し、それが蓄積され確立され外国人雇用のノウハウが今もそのまま息づいていると考えております。それらを協議会の方の日系人雇用に関するノウハウ集という形で仕あげさせていただきました。これからの雇用管理としましては当然その会社として新規学卒等の採用、中途の採用、アウトソーシング、人材派遣とかと合わせやはり採用の手段の一つとして外国人雇用を引き続き進めていきたいと、選択肢の一つという事で今後も会社の雇用管理の位置づけとしてやっていきたい、そう考えております。お聞き苦しい点もあったかとおもいますが、以上で私のお話を終わります。どうもありがとうございました。

【丹野】 本当にどうもありがとうございました。なんか見事に起承転結という形で結んでいただいたような気がして、しかもまた最後の井上さんのご報告はまさに企業がどうやって地域社会と摩擦を起こさずにうまくまとめあげるのかという、ある種の回答を出していただいたような気がするようなお答えでした。ここからは、ちょっとフロアの方の方からも色とパネリストの人達にご質問をお願いしたいんですけれども、質問はどうやって受ければいいでしょうか。マイクか何か回しますか。ご質問のある方お願いします。

【質問者(トヨタ自動車の方)】 色々と教えていただいてありがとうございます。私はトヨタ自動車の者ですけれども、私どもには直接雇用はないのですが、協力いただいている会社の方々にも非常に密接な関係のある課題でありますので、現在、真剣に関係者の方と話をしております。私共の関係者との議論の中で、必ず出てくるのが、ゴミ問題を始めとする生活習慣の問題、そして、保険の問題です。その他にも色々とあるのですが、何をどうやったら共生につながるのか、ということが見えて来ないのも実状です。

まず、保険の問題ですが、保険の問題は本当に問題なのか、と考えることがあります。例えば国民健康保険は年金と一体になっており、その制度にどうしても入れ、と言うから問題になるのであって、請負業者の方が工夫して作っておられます海外旅行傷害保険の「運用バージョン」みたいなものに加入してもらえば良いのではないかとも考えます。

保険に未加入であること故に、本当に悪くならないと医療機関にかからないことなど、問題は種々あるかと思いますが、医療機関での医療費踏み倒しの面からいうと、そのケースは思ったより多くないと聞いており、余りそのことだけに「問題だ問題だ」というふうに捉え過ぎない方が良いのではないかと思います。繰り返しになりますが、ブラジル人問題を考える時、すぐに保険という話しになりますが、これは、一朝一夕に片付くような話ではないため、海外旅行傷害保険の活用は、一つの解決策になるのではないかと考えます。

次に、ゴミ問題ですが、根底にあるのはコミュニケーション能力ではないか、と思います。簡単にいうと、日本で生活する場合はある程度日本語を話せる能力が必要だ、ということです。私はカナダで生活したことがあるんですが、カナダで受入態勢がしっかりしているな、と感じるのは、国若しくは行政が言語教育について、「もう新しい国に来たんだからこの国の言葉を使わないと、就職活動もままならないよ」というふうに、まず教え込むことがあげられます。徹底的に言葉を覚えないことには、いい就職ばかりか、職に就くことすらできないということなんですが、これがコミュニケーションのベースになるのではないかと考えます。それが無いからゴミ問題が起きるんじゃないか、と思う訳です。要は、言語教育の受入態勢が無いから言葉も通じない、言葉が通じないから、日本の生活習慣が理解できない、そして、言葉の通じるブラジル人だけが集まれば当然ポルトガル語だけのコミュニケーションになってしまい、自分達の慣習を善として生活してしまう。この結果の一つがゴミ問題につながっている訳です。

本来働くということはそこで生活するということですので、ベースはコミュニケーションができるかできないかにかかってきます。従って、日本に入ってくる時には、ある程度日本語ができないと、移住労働者の入国も制限するなど、制度自体を見直すことも考える必要があるのではないかと思います。単純に「日系ブラジル人だから入ってきて良いよ」というふうにやってしまった入管法の見直しにも若干課題があったのではないか、とも考えます。

これらの問題を根本的に解決するためには、その当たりにもメスを入れる必要があるのではないかと考えますが、そのあたりについて、ご経験豊富なパネラーの方から意見を賜ればと思います。

【丹野】 どなたか。非常に大きなテーマを出されてしまったのですけれども。何か今日のご報告の中だと成田さんが一番合っていそうですね。

【成田】 現場として、コミュニケーションの問題は痛感しています。移住労働者を受け入れようとする国、あるいはドイツ等でも今議論されていますが、やはりそういう国では、必ず国が言語を学ぶ時間・場所等の確保を保障し、それで労働者に来てもらおうとしています。残念ながら日本ではそういった部分まで制度化されていません。言語保障を国へ要望していますが、取りあえず日常的な言語ができるようにという事で地元の自治体とかボランティアが日本語教室を開催してカバーしているのが現状です。それだけで全てがカバーできているという事ではありませんが、ささやかな活動の中で支援しているというのが現状です。私からは以上です。

【丹野】 私も若干補則しますと保険の問題は確かに企業の側からすると、何でそこにばっかり話が行くと、それも又私も良く判るんですね。だけど一番の問題点にどうしてもなってしまうというのは、海外旅行傷害保険の場合だと、どうしても家族でいらっしゃる方の子供の部分とか、旅行傷害保険は基本的には個人ベースにかかる保険ですから、働いている人が病気になる分にはカバーされるんですけれども、養われている家族さんが病気になった場合に、その保険の人達がどうするのかっていう問題が生まれる可能性があるという事と、あと旅行傷害保険で業者が入っていると言うんですけれども、現実には入ってない人もいるんですよね、やっぱり。ある業者の中で全てが旅行傷害保険に入っているかっていうと自分のところの抱えている労働者の中で、やっぱり長く働いてくれている人とか、ある一定程度働いた人に対しては入れる。もしくは家族を持っている人達だったら入れてあげるという事はあっても、単身者とか会社に入ったばかりの人まで旅行傷害保険に入れているかっていうと、そうじゃない場合も多々ありまして、そうすると派遣労働というか、請負労働の中では現実に無保険の人も働いてしまっているという事があるという面があるという事を理解していただきたい。

 それから言語教育の問題は基本的にはおっしゃる通りだと思います。入ってくる段階である程度のコミュニケーションをとれる人が入るという仕組みにしないと非常に難しいんではないのか。しかし現実にはその日本の場合にはどうしても国籍法との関係で、とりわけ日系人というカテゴリーがやはり血統主義に基づいた観念からただの外国人よりも、より上位のステイタスを与えたわけです。それは言語の問題ではなくて、日本の国籍が血統主義によって成り立っているという根本原理にからんでしまっているので、この部分をどうするのかというのは非常に大きな問題で、実は本当は手を着けた方がいいんだけれども、法務省が手をつけられないような問題かなと私自身は思っています。その他何か更に付け加える事がありましたら。

【井上】 失礼します。今当社で働いているブラジルの方で、日本語に対する修得度としては、やはり満足に行っていない部分が確かにあります。それともう一つは、例えばポルトガル語の表示として、ポルトガル語の作業指導書ですとか、そういうものをある一定時期作ったことはありますけど、どうしてもそれがスイッチのオン、オフとか、言葉のニュアンスも先程私申しあげましたが、そのあたりのニュアンス違いが、誤った操作に繋がっているところがあるんです。ですから当社の場合はどちらかというと、ジェスチャー、手振り身振りの方でかなり頼っているところが多分にあるという事です。あと簡単な生活に密着した言葉、「おはよう」とか簡単な程度の日本語はできているんですけれども、やはり少し難しい日本語になってきますと、どうしても「分からない」で片付けられている。そういった事が今現状になっています。ただこれをどういうふうに打開しようか、会社としてどうするかっていう部分は、当社で社宅を用意し、そこで間借りをさせて、近くに居るという事で、何かあった場合も言葉の対応とかを日系ブラジル本人に直接来客があった場合でも、ある程度会社の方でガードしてやっているという事はあります。以前は日本語が本当に達者な社員さんもいました。その当時は全然不自由なかったですが、最近はそういう方が居ませんので、その辺の不便は確かに先程ご質問あった通りですね。言葉に対する理解度というのは、日本語、ポルトガル語双方に対して必要じゃないかと思っています。これでよろしいでしょうか。

【質問者(トヨタ自動車の方)】 現段階では、パネリストの方々や先生がおっしゃった通りだと思います。

但し、先程も話があったかと思いますが、現在、日系のブラジル人とかペルー人とか、所謂、南米移住者の子孫ということで、移住労働者などを受け入れていると思いますが、例えば、数10年経ったときに、「私はマレーシア人です。私は何々人です。私も移住労働者として日本で働きたいのですが、何故入国を差別するのですか」云々という話になり、国際的な問題が起き、太刀打ちできない状態になった時に、日本に雇用の機会はある訳ですから、請負業者を通じた移住労働者の受入れシステムが一般化される可能性も否めないのではないかと思います。そうなってくると、日本語が話せること、日本での生活が問題なくできることを条件にすることが必要であり、国を始め関係機関が、そのように見直しを行わないと、恐らくコントロールができなくなるのではないかと危惧しております。

次に保険の件ですが、先ほどから話をしておりますけれども、無保険の状態は一部に存在することは事実あると思います。例えば子供を病院に連れて行った時、医者の方でも医療費を被ることも危惧される訳ですから、「あなたは保険はありますか」と当然聞くと思いますが、「海外旅行傷害保険には入っているが、子供は入ってない」となると、当然医療費の負担が必要になる訳です。

海外旅行傷害保険は家族も加入できると聞きましたが、180日で3万8千円程度だったと記憶してますので、月額にすると一人6千円になります。仮に4人家族の場合、月に2万4千円の費用が発生します。健康保険でも1万数千円程度の負担でありますから同じ程度か、とも思いますが、いずれにしても、「無保険の状態で病気になったら高額の医療費負担がいるんだよ。仮に、医療機関からの請求で会社が負担をした場合は、給料から控除することになるよ」ということをきちっと理解させておく必要がありますし、当然、家族の保険もセットであるべきだと思います。併せて、現状では、年金受給金が受け取れないことも事実であり、そのことも十分理解させるべきだと思います。

先程山本さんがおっしゃったように、説明してもなかなか判ってくれない、ということもあるかと思いますが、「ここで働く限りは一つの条件である」ことを根気強く説明するしかないのかな、と考えます。

【丹野】 他にフロアーの方からご質問出ませんでしょうか。

【質問者(豊田市の倉橋)】 豊田市の倉橋と申します。山本さんにちょっとお伺いしたいのですけれども、先程子どもたちの教育の問題が出ましたけれども、一番学ぶ力、考える力を養う大切な時期は小学生時代や幼児期と言われています。この大切な時期に学ぶ機会がないというのは非常に大きな問題だと思っておりまして、豊田市の場合はですねブラジル学校、ここら辺ですと豊田か安城にあると思うのですけれども、岡崎の子供さんたちは実際にどんなふうにしているのかですね、公立の学校に行ってみえる方、行ってみえない方とあると思いますが、その辺の状況ですね、お判りになる範囲で結構ですのでお願いができたらと思います。

【山本】 はい、ブラジル学校はですね、今おっしゃいました豊田と安城、半田の方にもあると思うんです。半田の方に行っている方もございますけれども、その経費が一人の場合は4万、5万ですむのですけれども、二人となりますと経費が掛かるものですから、その問題に対して市県民税で何とかならないかって言うんですけれども、それは私立なので駄目と説明するんです。又10歳で日本に入国してそして今岡崎の高等学校に入って、この前優秀な成績で弁論大会に一等を取った、英語とポルトガル語、日本語を喋る人達も2、3人おられます。岡崎では大体、上和田町の城南小学校がブラジルの領事館と交流がありまして、あちらの大使もよく視察に、年2、3回訪れます。あそこではブラジルの子どもたちが日本の人達と混じって日本語の勉強ができているように思います。だけども中学校を卒業した生徒達は高等学校までは進めないんです。その子どもたちが現在どうなっているかといいますと、仕事もできない、そして又時間を持て余す、そして又結局は集団になっている。ブラジルの人達は集団で行動を起こします。そのために日本語学校を今、国際交流の岡崎では竜美ヶ丘会館とか、そして又今度新しくできました県民プラザセンターでも、土曜日にブラジル人の人のためにボランティアで日本語学校開いております。そのブラジル人の中学校を出た子たちには、そこの勉強も出席していないようですし、大体岡崎の方では10%、20%が岡崎の外で勉強していると思います。豊田の方もありますけれど、豊橋の方にもブラジル学校があるように聞いております。それでですね、家族で働いておりますために、その子どもたちの教育ができなくて相談に来る人達が今増えております。特に13、14歳の子どもさんを持つ親達がですね、本当に驚くほど自分の子は教育できないので、少年鑑別所の方に入れる方法はないか、そこまで相談に来るような現状です。大体ブラジルの人達は今現在3000人程岡崎には居りますけれども、その子どもたちの教育は大体中学校までは皆さんやっているように思います。これで宜しいでしょうか。私で答えられる事でしたら。

【質問者(トヨタ自動車の方)】 ブラジルにおける子供の教育感について伺いたいのですが、日系ブラジル人の方は、働く機会と収入を得るためにこちらに来たと思うんですが、子供が高校への進学時期になった時には、どのように考えるのでしょうか。私たち日本人が海外駐在する際、子供が現地の高校進学を選択する場合は、大学も現地の大学を選択するぐらいの覚悟をいたします。しかしながら、就学のペースやものの考え方も変わってしまいますので、殆どの場合は子供を日本へ戻すか、または、日本に残したまま赴任します。詳しくは知りませんけれども、ブラジルにも2万円から3万円も送れば、寮生活ができるような学校があるのではないかと思います。子供のことが大事であれば、子供を戻して現地の学校に就学させることや、または、分かれて暮らすことが難しければ家族揃ってブラジルに帰るという選択肢もあるかと思いますが、そのあたりをブラジルの方々は如何に考えているのでしょうか。

【山本】 4月ブラジルの方に行ってみたのですが、ブラジルの方では、今日本の経済が悪化し、日本で生活するブラジル国籍者の人達が困り、又子どもたちも勉強も十分にできないという現状がNHKで放映されております。日本の現状は即ブラジルでもニュースでその日に判るような現状です。しかし、ブラジルから出稼ぎに来た当時は日本で2、3年働けば、ちょっと稼いで、そしてブラジルに帰って、あちらでは500万、600万円で大きなマンションが買えました。普通の平屋を買うには中古で300万円ぐらいで買えます。そのような状況でした。自分が働いてそして送金して、子どもたちをブラジルで大学まで行かせたいという希望で入国したのです。しかし、やっぱり家族が恋しい、そして又日本が好き。それで日本の教育を受けさせたいという考えで10年前から家族がどんどん日本に入国しました。そして日本語学校に入れるのですが、親が日本語が話せないのです。そして日本の中学校を出た、又今現在日本の中学校で勉強している子どもを持つ親がですね日本語が分からないもので、コミュニケーションが取れないのです。子どもに携帯電話を持たせた、でも親がその携帯のメールが読めないので、市役所にそれを読んでほしいと言われたり、どういう友達を作っているとか、子どもがどういう問題をかかえているのか分からなくて心配しています。それなら、ブラジルへ帰して、ブラジルで教育を受けさせたらいいのではないかと言いますと、ブラジルは小学校が4年制です。それも朝4時間あるだけです。中学校も4時間、高等学校も4時間。そして大学は夜行っても昼に行ってもその成績は皆さん同じ実力です。ブラジルの人達は子どもの勉強はさせたいのですが、日本語の勉強をさせると自分が子どもから離れていくという気持ちがありそのためにブラジル語の勉強をさせたいという気持ちの方が大きいと思います。

【質問者(トヨタ自動車の方)】 日系ブラジル人の方は、どのような形でライフスタイルを考えているのでしょうか。一般的には、生活、仕事、子供の教育等々、色々なことを考える必要があると思うんですが、そのあたりが曖昧だと、適当に「まず稼ごうか」「ある程度稼いだから帰ろうか」というようなことになりかねない。出稼ぎの期間もはっきりせず、例えば「すぐにブラジルに帰るから子供は帰ってから教育を受けさせれば良いか」などという安易な考えの中でずるずると日本に滞在すると、子供は、自国でも日本でも十分なコミュニケーションができないことになってしまう、などと言った問題が出てくるはずです。従って、労働移住者のための一定のガイドラインやルールみたいなものが必要になるのではないかと思います。私共の会社も大勢の方が海外に駐在しますが、子供の教育は大きな問題の一つであります。社内でも色々と相談に乗っていますが、現地で一緒に暮らすのであれば、時期とかタイミングがあるでしょうし、逆に、現地にいる子供さんをこちらに帰すことなどについても話をしております。そういうことが無いと、我々は赴任を決断できないほど、教育問題については大きな懸案事項の一つだと考えております。

【山本】 そうですね。以前はビザの問題も1年、3年で更新していったのです。4月に帰りましたが、ブラジルの経済や治安が凄く悪いのです。日本のこの安全な国に住みますとブラジルに帰国できないという人が多いのです。それで子どもたちも日本の教育かブラジル学校の教育を受けさせたいという考えの人が多いのです。一つの信念を持った人は、ブラジルの教育を受けさせるために、子どもが6歳ぐらいになったら帰国しております。お金もうけに走った人達はやっぱり日本でズルズル働いております。日本へ入国した目的が自分はブラジルで子供の教育を大学まで受けさせる、そして家を買う、親兄弟に孝行するという目的が、もう日本の生活に慣れてしまいまして自動車を買う、そして結局自分たち雇用の問題では寮は不安だから、公営住宅に入りたいということで、公営住宅にどんどん入居させてもらっております。そうなったら特に帰りたくなくなっているような状態です。日本で働き、市県民税そして又国民健康保険に入っていれば、払うようになります。国民健康保険とか市県民税の支払いは後回しになって、自分たちの生活の方に先に使ってしまうんです。このような時に雇用が落ち込みました。そして又特に先にクビになるのはブラジル国籍者という例もあります。特にブラジル国籍者は景気の良い時は、残業、残業に追われまして、移動も激しかったのです。だからその公営住宅入居申込みに必要な所得証明書、納税証明書はどこでとるか、ビザの問題でも、所得証明書、納税証明書が基本です。その問題もありますが市県民税はビザを取るために、支払うという人も多くなりました。日本に永住したいと岡崎の方で相談する人が、大体半分以上居ると思います。特に日本の場合は治安が良い事と、市役所では母子手当、そして児童手当があります。そのような制度はブラジルにはございません。ブラジルに子供を置いて教育させていた人達の中には、いつの間にか日本に呼んでいる人達もいます。そして日本の母子手当・児童手当の手続きの相談に来ます。だから結局は、最初の目的はどうにかなってしまい日本に住みたいという人が多くなりました。そしてテロ問題以降不景気になって一番困ったのは雇用保険です。三ヶ月、六ヶ月、長くて一年の契約ですから、雇用保険が掛かってないんです。それで即クビになったら生活できないんです。住むところがないんです。そういう人達の問題がいろいろありました。特に市営住宅に入っていた人で、子ども2人連れて、去年の11月だったと思いますが、帰国する費用も無し、何も無い。結局ブラジルの人達は宗教団体を組みまして、土曜日、日曜日は教会に行って自分の気持ちを癒し、そしてお友達と色々お話しあって、コミュニケーションをしていました。ブラジルの人達は、助け合うという気持ちが大きいんです。それでその人達も教会の信者の好意で、4人の旅費を出してもらってブラジルへ帰国したという例もあります。

【丹野】 はい、ではそろそろコーディネーターとしてまとめる時間になってしまいました。今日の話はですねまとめろと言われても実質的にまとまりようのない話で、余りにも幅が広すぎるからです。しかし成田さんがおっしゃっていたような、生活者としての環境整備をどうやって考えていくのかということの最初の場というぐらいに考えていただいて、その具体的な方法として、井上さんの方から提示されました、習慣と慣習が違う人々とどうやって割り切った付き合い方ができるかというのがある種の回答だと私は思います。

それは地域社会の場合にも実は同じ事が求められて、全く同じ人々、要するに自分たちと同じ感覚、同じ常識を持った人々という前提を掲げるとどうしても文化摩擦というか、受け入れられないという領域が出てしまうのに対して、ある種どこかで割り切りみたいな物が必要とされているというのが今日の話の中からも出てくるんだと思います。但しこの場合においても学校とかゴミの問題とかでは、日本人の方も考えないといけないんだけれども、日系の方にどうにかですねはっきりとした意識というものを同時に持っていただかないというそういう両極、両サイドの局面を持った問題として、今後、豊田や岡崎市はどうやって対処していくのかという事が今日のこの部会が架せられた課題なんだと思います。私からは今日集まった人達がですね、なんらかの形でとにかく地域に外国人が住んでいってしまうという現実があって、じゃあその中で何ができるのかというものを考えてもらう機会にしていただければと思います。以上です。

【司会・山本】 ありがとうございました。以上でパネルディスカッションを終了いたします。それではここで閉会にあたりまして副会長事業所の三菱自動車工業の株式会社名古屋製作所の高橋様にご挨拶をお願いいたします。

【高橋】 丹野先生それからパネラーの皆様方大変お疲れ様でした。また本シンポジウム開催にあたりお忙しい所お集まりいただきましてありがとうございます。只今承りましたお話、大変有意義なものであり、今後の企業の雇用管理に役立つものと思っております。ご参加いただきました皆様に感謝を申しあげまして閉会の挨拶に返さしていただきます。以上です。

【司会・山本】 パネリストの皆様方、丹野様ありがとうございました。参加者の皆様方恐れ入ります、今一度大きな拍手をお願いいたします。ありがとうございました。引き続きですね懇談会をご用意してございますので、ここでは名刺交換並びに自由にご歓談いただきたいと思います。お時間的には30分程度を予定しておりますので、机の上に置いてあります、このような名刺入れ、名札入れなのですけれども、こちらにお名刺の方を入れていただきまして、あちらの会場の方にお移り下さい。ありがとうございました。