講演会 会議録

日 時:4月7日(水)14:00〜16:00

会 場:岡崎商工会議所 2F中ホール

表 題:「中国ビジネス〜チャンスとリスク〜」

【基調講演】

講 師: 愛知大学現代中国学部 教授 服部 健治 氏

【パネルディスカッション】

パネラー : 

伊藤 公正<富士ファイン椛纒\取締役、超極細電線などの2工場・4営業所の中国投資を行う>

杉浦 惠造<活垣屋代表取締役、玩具花火を中国の8企業に生産委託・輸入を行う>

畔柳 勝   <光洋毛糸椛纒\取締役、毛糸紡績・カシミヤセーターの3工場の中国投資を行う>

コーディネーター:

服部 健治氏 <愛知大学現代中国学部 教授>

 

基調講演 

講 師:愛知大学現代中国学部 教授 服部健治 氏

「中国ビジネス〜チャンスとリスク〜

―市場としての中国をどう見るか―」

 

T.中国経済は強いのか

@     外部世界と中国指導部の認識のギャップ

(外部世界の認識)     (中国指導部〔内部〕の認識)

世界の工場         総合国力の弱さ

2003年中国経済成長9.1%    グローバル時代における国際競争力の脆弱性

A胡錦涛政権の理念

「3つの代表」―中国共産党は先進的な生産力、先進的文化の前進、広範な人民の根本的利益を代表しているとする思潮

U.日中経済関係の新段階―市場としての中国の台頭

@.市場としての中国・・・巨大な生産規模と膨大な潜在的購買力を有する市場

A.官と民の分離による日中両国の産業間、企業間の本格的競争

 

V.中国市場のチャンスとリスク

@     チャンス

@.WTO加盟の約束事項実行―関税率の引下げ、国内市場の制度緩和 →市場規模の拡大

A.本格的な体制転換 →市場信頼度の向上、憲法改正により一部私有財産所有認める、国有企業と民間企業の競争力育成

B高度経済成長路線の堅持 →成長市場への期待

A     リスク

@.投資における「不透明・唐突・曖昧」

A.中華スープ=(4つの不・・・不合理、不公平、不誠実、不愉快)

B.税務・関税問題、労務・労働問題、外為・金融問題、売掛金回収困難 等

C.過去の歴史からくる日本企業への風当たり

 

W.「市場としての中国」に対する経営戦略

@. 必要があるのか再確認

A.自己がよきパートナーになりうるか、明確な経営戦略があるか再確認

B.現地化→中国人幹部の育成と登用・・・中国市場の販売は中国人でないとできない

C.現地法人の権限強化・・・市場激化による即断即決(現地責任者の意思決定過程の明確化)

D.中国の行政機関との関係緊密に

E.対中経営戦略の基本的観点…(短期的)中国市場をもっと研究する

              (長期的)中国の弱点も認識する

 

パネルディスカッション

1.中国進出動機 

富士ファイン

伊藤氏:1985年のプラザ合意により輸出が困難になり、ドルと連動したところということで中国を選んだ。

杉浦氏:需要の拡大によって生産が間に合わず、中国に生産委託をした。中国の花火の方がアイデアがいいものがあり日本市場に受けた。

畔柳氏:円高に追いかけられ、輸出が困難になり、中国へ進出。

2.中国ビジネスのリスク・苦労・問題点 

伊藤氏:中国だからリスクがあると感じたことはない。税制は変わっていくが、日本でもそれはある。変わる前にはだいたい1年前から噂話が出るため、その間準備ができる。また、顧客数を増やし、1件当たりの売掛を減らす。

杉浦氏:品質問題。品質が安定しない。PL法など日本の基準がどんどん変わっていくが、それに合わせるのが大変。また、商品があっても運ぶコンテナがなくて、流通の際に水浸しになって使えなくなったこともあった。

畔柳氏:常識の違い。品質、納期の問題は以前と比べたらかなり改善した。

3.信頼できる中国人を見分ける秘訣 

伊藤氏:工場見学をして5Sが徹底している企業。

杉浦氏:工場管理の徹底。問題がおきたらじっくり話せば解決できる。

畔柳氏:人脈とお客さんの評判で判断。

4.今後の中国ビジネスを始める上でのアドバイス 

伊藤氏:やるなら独資で。合弁でやっている所はたいてい苦労している。経営スタンスが違う。事業の継続を重視する日本と投資をいかに回収するかを考える中国。中国ビジネスは派遣する日本人社員によって7―8割決まる。自分より優れている人、一緒に汗をかく人、尊敬できる人の言うことは聞くが、同等あるいは自分より下の人の言う事は聞かない。

杉浦氏:独資でやるべき。余裕を持った発注スケジュールが必要。技術の流出が心配。

畔柳氏:一度中国とビジネスを始めると、途中で止めるのが難しい。うちは合弁でやっているが、利益のためには十分な話し合いを。

5.中国ビジネスを行う信念・哲学 

伊藤氏:製造業において企業を成長させようと思ったら、ボーダレスという感覚で中国と何らかの形で関わらなければ今後企業の成長はないのではないか。

杉浦氏:話し合えば分かり合える。信頼できる。契約の時言うべきことはハッキリ言えばその後信頼関係で仕事をできる。

畔柳氏:中国人とは信頼してビジネスを行えるものだ。国と国の関係さえうまくいけば、今後経済のみならず人的な交流もどんどん進むはずだ。

コーディネーター:中国とビジネスする際、利用するのではなく共に繁栄できるよう共存していこうという姿勢が重要だ。

 

(文責:事務局)