1.地域企業を取り巻く経営環境


 今、メガ・コンペティション(大競争)といわれる競争環境の下にあり、企業は、業種のいかん、規模の大小を問わず世界的規模の競争の中に身を置いている。そうした中で地域中小企業を取り巻く環境は、近年、次のような変化が生じている。

@我が国の主要企業は、為替リスクのへッジ、高い経済成長を続ける東南アジア市場への対応、EUやNAFTAなどブロック経済化への対応等々を狙いとして、世界戦略を構築し、海外ネットワークを強化させている。この結果として特に国内製造業の空洞化が急速に進み、製品や部品の輸入の増加と相まって、中小製造業では受注構造に大きな変化がもたらされ、自らが国際化するか、業種・業態を変更させるかの選択をを迫られている。

A小売商業の分野では、大規模小売店舗法の運用緩和を受け、外国系資本の国内市場への参入とあわせて、大手スーパーがスクラップ&ビルドを強力に進め、新たな陣取り合戦の様相を呈している。更に、閉店時刻の深夜化は、コンビニエンスストアをも巻き込んだ新たな競争環境を生み出している。当市においては、売場面積の6割強を大型店が占めており、商店街は、競合関係で明らかな劣勢にあり、新しい発想の下での業務の革新が求められている。

Bパソコンの性能向上は、ダウンサイジングをもたらし、コスト・パフォーマンスの向上とともにその普及も一段と加速化している。それに伴い、インターネットの活用に対する関心も高まっており、バーチャル・モールやバーチャル・コーポレーションなどマルチメディア技術を活用した新しい経営 環境が準備されつつある。企業にとって情報・通信技術の進展は、経営情報のディジタル化と通信ネットワークの活用を進めることで、地域を越えたパートナーシップを広げ、新たなビジネス・チャンスをもたらす可能性を持つものとなる。世界でEC(電子商取引)やCALS(製品の全プロセスにおけるデータの電子化により商取引を迅速化する)の研究・実験が進んでおり、中小企業においてもネットワーク時代への適切な準備や対応が求められている。

C1995年の我が国の出生数は118万7000人で、第1次ベビーブームのピークの出生数269 万6000人と比べると、わずか44%にすぎない。少子化の傾向が現状のままで推移すれば、急激な高齢化社会の到来により社会・経済の大幅な活力低下をもたらすことが確実視される。既に新規学卒労働力の供給量は減少期に入っており、今後20年間増加することがない。長期にわたる若年労働力不足は、生産はもとより新技術の開発・導入にも支障を与える可能性があり、特に、中小企業では、労働力の高齢化が進まざるをえないことを示している。一方、2020年には、65歳以上の人口比率が約25%と見込まれる高齢社会の到来は、これに対応する新たな膨大なニーズの発生も見込まれている。

D国際競争力を比較した場合、最強を誇ってきた我が国企業において相対的な高コスト構造が目立つようになっている。これは、単に人件費の比較みならず、通信インフラや空港整備に代表される産業基盤整備、税制、新規参入を抑制し自由な競争を阻害する各種の公的規制の存在等が現在の世界的競争環境の中での足かせとなっている。経済活性化の切り札として期待されている規制緩和は、新規参入のチャンスをもたらすと同時に規制の枠内にあった企業には、リストラを始めとする大きな変革を求めることになる。



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