第7回会議 会議録





平成10年度第7回新事業創出研究会

開催日時:平成10年11月11日(水) 15:00〜17:00 於 岡崎商工会議所401会議室
出席者 :12社
コーディネーター:草間晴幸 大阪大学大学院助教授
   同    :服部良男 岡崎商工会議所情報化委員会委員長
  ゲスト:株式会社アイ・コミュニケーションズ 代表取締役 山田 尚 氏

内容:以下の通り。
「草間コーディネーター開会あいさつ」
 本日は株式会社アイ・コミュニケーションズ代表取締役山田尚様から「ひと社会のゆくえ〜メディア・コミュニケーションの時代へ」と題してお話をいただきます。山田先生のご略歴は本日先生から頂戴してお配りいたしましたご著書の巻末に記載されておりますのでご覧ください。なお、終了後は懇親会も予定しておりますのでご参加いただきますようお願い申しあげます。
 では、株式会社アイ・コミュニケーションズの山田様よろしくお願いいたします。


1.「ひと社会のゆくえ〜メディア・コミュニケーションの時代へ」
 ゲスト:株式会社アイ・コミュニケーションズ 代表取締役 山田 尚 氏

 ただ今ご紹介いただきました山田でございます。私は放送の出身ですが今日はマイクは使いません。と、いうのは皆さんとコミュニケーションをとりながら進めていきたいからです。大学などで講義をする時も私は少人数での講座しか持ちません。今ある情報の経路は一方通行が多く、ようやくインターネットが双方向になりましたが十分ではございません。
 さて、NHKに入った時に放送とはどうやるのか初めてわかったのですが、やっと放送がわかった頃に名古屋に民放が出来るので給料を倍出すからと誘われて名古屋に戻ってきました。実際には倍ももらえませんでしたが。
 やったことはラジオの立ち上げです。アメリカには先例がございましたが文化も国民性も違う日本では初めての民放ということで、電波は貰ったものの流すソフトが無く、今で言えばネットワークが出来たが何を流してどう処理してお金を儲けるかわからないという状況と同様です。
 東京からタレントを呼んでこようにも余裕がないので、浪花節でも放送しようと流したらこれが大好評でスポンサーも付いた時代でした。

 次はテレビですが、これも問題はソフトでした。当時名古屋では書く人がいない、出演者もいない状況でありましたが、民放各局でネットワークを組んで番組を作り上げていくことにしました。しかし、当時は回線がなかったので、電波でつないだため、途中でよく切れたものでした。
私がテレビの次に関わったのは、ケーブルテレビです。当時はアメリカへ行くのも大変でしたが、通訳を同行させて研究に行きました。名古屋で2つのグループのCATV立ち上げに関わりましたが1つはつぶれてしまいました。

 その次に関わったのは今でいうミニFM局です。今でもFM岡崎の番組づくりに関わっていますが、具体的に立ちあげるにはマーケティングが重要だということを身をもって体験してきました。
 ところで、私の本来の研究テーマはメディア論です。メディアの原点を探っていったら言語に行き着いたのですが、人間は言葉を使いはじめてから、他の生命と異なって文明を作ってきたと言えますが、なぜ人間が言葉を使うようになったかは定説がないのです。
 問題は情報とは何ぞやということですが、情報とは「情けを知らせる」ことであり、耳で聞くだけでなく、抑揚や手つき、目つき、身振り、風格などすべての情が伝わってこそ理解できるのです。

 メディアについては、この本に書いてありますが、これは序説ですので本論は現在執筆中です。今言えることは、文明がスタートして狩猟生活の時代が数万年、農業生活で数千年かかり、産業革命で数百年の単位で進み、コンピュータがスタートした1950年代以降は数十年で世界が変わってきたように、時代は1桁ずつスピードアップしました。ということは、今後は数年で世界が変わることになるだろう。2000年から2010年にかけて大変革を迎えることになりそうだと予測しています。
 21世紀は情報と環境の時代であり、人間の欲望をいかに制御するかが大きな問題になってきます。ノーベル賞クラスの学者の集まりに参加して聞いた話ですが、世界の1%の人が制御する側に立ち、99%の人が制御される側に立たされるとも言われています。どうか、皆さんは制御する側に回っていただきたいと思います。

 東大の月尾氏らと懇談する機会をもっていますが、月尾氏が言うところのボーダーレス社会、すなわち境目が無くなることとは古い秩序が崩れることであります。今まではマーケティングリサーチして大量販売に結び付けてきましたが、これからは調査してもわからない時代になってきました。
 懇談の中で出たキーワードとしては大衆から個人対象、計画生産から注文生産、供給主導から需要主導、実物経済から仮想経済の4つで、仮想経済の中では商売になるものとならないものがあることを判別することが大切になってきます。メディアコミュニケーションの時代では、直接さわって、目で見て納得して買うのでなくイメージ商品を仮想社会の中で作っていくことがポイントです。アメリカでインターネット上の書店で大きく伸びた会社もございます。

 さて現実の課題として、新聞・テレビ・ラジオなどが報じていることは、すべてが嘘ではないけれども真実ではないことを十分認識しておくことが必要であるということです。私がいうところの情報リテラシーとは隠された情報をいかにして知るかが重要で、常に考える余裕を持っていて欲しいということです。
 また、これからは設備投資よりも人材投資にお金をかけるべきで、当たり前の人間を当たり前に教育していたのではだめで、新しいアイデアを出す人間、バラエティーに富んだ人間などの人材投資にお金をかけるべきだとおもいます。さらに、先程も申しましたが、時代は1桁ずつスピードアップしていますので決断のスピードが求められる時代がきています。

 それから、東海大学の唐津一氏が、これからはの成長産業はサービス産業で、個人がこうして欲しい、ああして欲しいと感覚的に満足するようなサービス業が伸びるだろうと言っています。唐津氏はこれを「ズボラ産業」と呼んでいますが、人が真似の出来ないもの、感覚的に納得できるもの、めんどくさいこと、やりたくないことなどをいち早くやった者が勝ち残る時代ともいえましょう。

 それには、最新の技術の情報などを人よりも早く知るため、ネットワークをつくっておくことが重要です。私は名古屋でメディア・カフェというのを開いてきましたが、言わばこれは、大学の先生や官公庁の人などの溜まり場のようなものです。さらに、企業もまじえたメディア・フォーラムをたちあげました。先日吹上ホールで行なった名古屋わくわく技術交流展の資料を入れておきましたが、これは名古屋地域の理工系大学・公設研究機関が集まって新技術・新製品の展示により、中小企業の異業種交流・販路拡大のための催しです。大学関係だけのカレッジ・プラザというのもございます。
 とにかく、皆さんはあらゆる手段を通して情報を集約すべきであります。ただ、マスコミからの情報は皆が知っていることですから、自分だけの情報集めには人脈づくりが必要です。特に最近の官庁の人脈づくりには驚嘆するものがあります。

 さて、私は岡崎市の情報推進のメンバーですが、現在農村マルチメディア構想を進めています。元々この地域は農業で繁栄してきた土地ですが、環境問題などで農業は21世紀の最先端産業になり得ると考えています。日本の歴史的な背景を無視していいはずはございません。マルティメディアというのも日本にふさわしい形を築くべきだと思います。皆さんが進めてみえるスマートバレー構想についても日本型スマートバレー計画ができても良いと思います。

 日本人はアイデア・発想には長けているがそれをうまく使っていないのが現状です。マーケティングはそもそもアメリカでできたものですが、もっと戦略的なことをコーディネートする人材を大学で育てて欲しいと思います。コーディネートとは多部門にわたって、優れた部分を集めて機能させることで、さらに言えば、議論ばかりしていたのではやらないと同じことです。先程も申しあげた通り時代のスピードは1桁ずつアップしていますから。
 テレビももうすぐパソコン機能がくっ付いてデータをバンクすることができるようになるでしょう。すなわち衛星放送から番組を取り込んで、オンエアーにとらわれず見たい時に見たい番組が見られるようになるでしょう。

 最後にこれからは、ある程度の専門知識と、語学は5カ国程度特にラテン語系の語源がわかると理解に役立つことになるでしょう。さらに、技術だけでなく、コーディネート能力が必要で、決断のスピードが求められる時代を迎えます。時間もまいりましたのでこれで終了いたします。何かご質問がございましたらお願いします。

「服部」情報リテラシーについてですが、マスコミの報じることは嘘ではないが真実ではないとおっしゃいましたが、情報の選択は自己責任ということでしょうか。
山田:ちょっと違います。責任問題ではございません。情報の裏を読むこと、特にカットされた情報を前後の脈絡から推察して埋める能力が大切です。リテラシーとは基本的技能、読み書きそろばんのことですが、私が言いたいことは情報の裏を読むには知識が必要だということです。マスコミの情報は随分省略されていることを初めから疑って欲しいのです。
 また、イランイラク戦争の時に死にそうになった海鳥の映像を流して人間の感性に訴えました。これからは、感性に訴えて、相手も感覚的に満足しないとお金を払わないようになると思います。さらに、人間社会は永久にオフレコの世界がなくならないし、人を満足させるには最終的にはこれしかないと思います。

「服部」感性を磨いていくのはどうしたらよいのか、またトレーニングはできますか。
山田:一つは好奇心だと思いますが、最終的には脳科学を解明しなければいけません。解明できればノーベル賞ものですが、この本の続きとしてそうしたことを書きたく研究しいています。
「服部」:マーケティングは個々対象になると言われましたが、成功している実例はありますか。
山田:先程も触れましたが、アメリカのインターネット上で書店を開設している会社は成功しています。本の様な物は全く個別的なのでインターネット向きと言えましょう。配送までのスピードがポイントになります。

M:放送局の使命も変わってくるということでしたが、ニッチ狙いの小さな会社と、合併して大きな会社が残るのかどちらでしょうか。
山田:結論を言えば、この両極端に集約されてどちらも残ると思います。と、いうのは例えばオリンピックの放送には莫大な資金がいるので大きな会社でないとできません。一方、私だけが見たい番組、例えば成功例として予備校の受験対策番組、地域限定の天気予報などを作るところが残っていくでしょう。

M.ハイビジョンは本当のところどうなりますか。
山田:何らかの手を打たなければ、結局はアナログのハイビジョンは無くなってデジタルになるでしょう。
「服部」デジタルでないとデータは送れません。ところで、アナログは残れないのでしょうか。
山田:美術品や本など感性に訴える物は残っていくと思います。確かにデジタルでないとデータは送れませんので、デジタルで送ってアナログで見るというようになると思います。デジタルだけの世界は生きていて楽しくないと思います。
「草間」私の持論としてデジタルは決してアナログを超えられないと考えています。と、いうのも映画を良く見ますが、原作本のおもしろさを超えた映画にはお目にかかったことはないですからです。
山田:まさに、同じ事を大江健三郎が言っています。

「草間」時間もまいりましたので終了といたします。引き続いて場所を変え、懇親会を開催しますのでご都合のつく方は是非ご出席ください。

第8回の新事業創出研究会は11月25日午後2時より岡崎商工会議所401で開催する。
(以上)






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