コーディネート活動支援事業成果報告書





1.事業の題名
  新事業創出を目的とした産学協調活動と情報基盤整備

2. 事業実施者
 T.コーディネート機関名;岡崎商工会議所
 U.コーディネータ名   ;草間晴幸 : 大阪大学 大学院 助教授
              服部良男 : 服部工業(株)代表取締役社長
                岡崎商工会議所常議員、情報化委員会委員長
3. 事業内容
T.事業全体の概要
・ 事業の目的、ねらい
〇基本コンセプト:
 バーチャルコーポレーション(Virtual Corporation ; VC)のシステムが生み出されて久しい。VCとは到達目的に応じ必要となる種々の技術や知識を有する複数の企業が集結し、協調活動を行うプロジェクト推進志向型の企業連携システムである。そのシステムの運用では、コミュニケーションの促進および情報の交換・共有を目的として、インターネットで代表されるグローバルネットワークが利用されている。
 代表的なVCに航空機製造会社のボーイング社がヘッドとなり日米の企業が協力して新しいジェット機の開発を進めたプロジェクトがある。
 VCはプロジェクトの目的達成後、概ね、新たなVCへと発展する場合が多いと考えられる。中小企業事業団が実施しようとしている「新規成長産業連携支援事業に係るコーディネート活動支援事業」の目的は、中小企業が外部専門家からのアドバイスや他企業・研究機関等との提携等をニーズに応じて組み合わせ、外部機関との連携の形で外部経営資源を活用することを目指しており、この事はとりもなおさず、真にVCの構築を意味しており、コーディネータはVC構築のインターフェースとしての役割を持つものと考えている。

〇地域情報化の啓蒙活動:
 平成7年12月、21世紀を創る会・岡崎を母体として情報通信分野のベンチャー事業創出の支援を目的としたOkazakiマルチメディア研究会(略称OMS)が設立された。
 コーディネータの草間晴幸と服部良男はOMSの設立発起人の内の二人であり、草間は現在OMS代表である。OMS発足直後の平成8年4月に岡崎市制80周年記念事業メディアアドベンチャーが開催され、岡崎商工会議所の担当スペース「インターネット広場」の企画をOMSが行い、OMSの設立発起人である市民起業家達がボランティアでこの企画を支援した。
 同時期に、岡崎商工会議所のインターネット用ホームページが草間によって開発され、これを「インターネット広場」で公開した。「インターネット広場」の企画を経験することにより、産学協調活動、および、ネットワークを利用した市民起業家間での協調活動に関するノウハウを樹立することができた。

〇バーチャルベンチャーコーポレーションの構築:
 平成9年6月、OMSの設立発起人を中心とした岡崎市内の市民起業家の篤志により、バーチャルベンチャーコーポレーションFrontia(VVCフロンティア)が設立された。
 VVCフロンティアはインターネットのサーバ上にバーチャルスペースを保有し、ホームページの運用管理とメイリングリストによる電子メールの交換を行うことにより、地方自治体、大学および企業間での協調活動ができるようになっている。
 このホームページでは、市内商工関係者から建設が熱望されている市内中核施設であるハイコンプレックス21のコンピュータグラフィックスを始め、中三河地域の市町村の活動、小中学校をも含んだ教育関連施設やジャンル別企業の紹介情報を閲覧することができる。
 また、VVCフロンティアは通商産業省の認可団体ニューメディア開発協会の平成9年度事業「知的資産ネットワーク形成調査事業」のホームページとしても活用された。VVCフロンティアの運用を通じて、産学官協調活動のノウハウを取得できた。

〇新事業創出研究会の発足:
 国際化・情報化の進展や規制緩和の流れの中、環境変化に伴って生ずる新たなビジネスシーズの発掘や新事業創出の検討を目的に、岡崎商工会議所会員有志により平成8年10月に「岡崎商工会議所新事業創出研究会」が発足した。
 26事業所が参加し、19回の分科会と8回の全体会議を重ね、平成9年12月に報告書「マルチメディアプロジェクトからの提案」をまとめた。以下に、その報告書の中で提案された7つのプロジェクトを列記する。

(1) 環境とコミュニティ;地域の関連団体や技術に関する環境データベースの構築。簡易コンピュータグラフィックスを活用した景観環境評価手法の開発等。
(2) CATVを活用した画像伝送;福祉・医療・ビジネス・教育等での活用。愛知万博に対応した大規模なVODシステムによる地域情報発信。
(3) 集配システムのソフト開発支援;情報通信技術とセンサー等を組み合わせた効率の良い集配システムの開発。CATVと連動した高齢者向け宅配システム、ルートセールス業務の集配システム、ゴミの収集(市役所)等への展開。
(4) 海外ソフト開発企業を活用した地域活性化の推進;パートナーシップ提携に基づく、インド・ロシア・中国等の海外の安価で高度な技術の活用。
(5) ビジネスから芸術・文化に至るVVCフロンティアの多様な活用;バーチャルベンチャーコーポレーションfrontiaの拡充整備。バーチャル岡崎美術博物館の画像データを始めとした各種データベースの構築。
(6) ネットワークヘルパー事業;地域内中小企業のニーズに沿った社内・社外のネットワーク構築および活用の支援。
(7) 支援組織を活用した地域情報化支援;産学官の協調活動による情報関連分野の人材育成を中心とした地域の情報化の推進。

〇岡崎大学懇話会の発足:
 平成9年11月、岡崎市内に立地する2大学4短期大学の学長または副学長が発起人となり、その保有する学術・教育・文化機能を地域の活性化に有効利用することを目的として岡崎大学懇話会が設立された。
 この会は米国のシリコンバレー地区の発展に寄与したスマートバレー公社を規範とする三河地区の活動団体・三河スマートバレーネットワークにも協賛し、岡崎を中心とした三河地区の産学官協調活動に大きく貢献することになった。

〇コーディネート活動事業の目的:
 上に述べたように、コーディネート活動の本質的な目標はバーチャルコーポレーションの構築と捉えることができ、コーディネータはVC構築のインターフェースとしての役割を持つものと考えてよい。
 上記に示したように、いくつかの実践的プロジェクトを通じ、産学または産学官の協調活動やVVCの運営管理を段階的に経験し、それらのノウハウを育ててきた。コーディネート活動支援事業に対しては、これらをより有効なシステムに成長させていくことが重要であり、延いては、その支援事業を成功ならしめる最も有効な手段になるであろうと考える。
 コーディネート活動支援事業であるなしにかかわらず、地域活性化を目的として、今後も種々のプロジェクトが生まれてくることであろう。これらのプロジェクトを推進する過程で、中小企業が外部の経営資源を有効活用し、企業としてのポテンシャルを高めるためには、情報のオープン化が必要である。オープンにされた情報を相互に共有することにより真の意味での協調活動が可能となる。
 そのために、ネットワーク上で特定のプラットフォームに依存せずに情報の蓄積と情報の利用ができるデータベースおよびデータベースマネージメントシステムの構築が不可欠と考える。

・事業の概要
(1) バーチャルベンチャーコーポレーションfrontiaの拡充整備
(2) 新事業創出を目的とした研究会の開催
(3) 産学協調活動を目的としたセミナーおよび研究会の開催
(4) 産学協調活動を目的とした地域の知的資産データベースの構築
(5) 企業ニーズの発掘調査

U.事業結果の詳細
・ コーディネート活動支援事業キックオフセミナー
地域における産学協調活動の促進をテーマとし、地域内の企業が産学連携の意義とその推進方法を理解し、実現化への意欲を高揚することを目的として開催した。
 日   時: 平成10年10月29日(木)
 会   場: 岡崎商工会議所中ホール
 テ − マ:「産学協調活動と地域の活性化」
 基調 講演:「新産業の創出と日本経済の再生」
 講   師: 名古屋大学経済学部長 奥野信宏氏
 パネルディスカッション:「21世紀に向けての産学協調活動のあり方」
       パネリスト: 愛知学泉大学学長     寺部暁氏
              愛知産業大学学長     内藤昌氏
              岡崎学園国際短期大学学長 竹市明弘氏
              岡崎女子短期大学副学長  竹本洋氏

・新事業創出研究会
 岡崎市内中小企業社による岡崎市を中核とした地域におけるニュービジネス創出を目的とした研究会。社内の情報化、デジタル技術開発の紹介およびニュービジネスへの応用可能性に関する研究と産学協調活動への適用性の検討。

第1回 平成10年8月18日(水)
(1) 本年度の新事業創出研究会の活動について
(2) 中小企業事業団公募事業「コーディネート活動支援事業」採択決定について
(3) 愛知県の公募事業について
(4) データベース振興センターの公募事業について

第2回 平成10年8月28日(金)
(1) MICSのマルチメディア通信網サービスについて
   説明(株)西三河ニューテレビ放送 取締役通信事業部長 長田好正氏
(2) インターネットマーケティングとバーチャルコーポレーションについて
   説明(株)ヤマサ 取締役社長 服部良男氏
   同社 マーケティングマネージャー Declan Murphy氏
(3) 本会の進め方についての協議

第3回 平成10年9月9日(水)
(1)産学連携の進め方
   説明 愛知学泉女子短期大学事務局長・岡崎大学懇話会幹事 木村剛也氏
(2)研究テーマ具体化のためのフレームについての協議

第4回 平成10年9月30日(水)
(1)地図情報の活用〜インターネット不動産情報サービスの展開について
   説明 (資)ジェイ・オー23 代表社員 大原長英氏
(2)コンピューターグラフィックス創作におけるGISの活用
   説明 大阪大学 大学院 助教授 草間晴幸氏
(3)第1回学生DBワーキンググループ会議報告

第5回 平成10年10月14日(水)
(1)我が社のマルチメディア活用事例紹介
   説明 (株)ダッド 常務取締役 細野正比古氏
(2)第2回学生DBワーキンググループ会議報告

第6回 平成10年10月28日(水)
(1)写真業界のデジタル化対応
   説明 (株)名古屋カラー三河現像所 課長 広沢雄次郎氏
(2)三河スマートバレー・ネットワーク(MSVN)との連携
(3)データベース構築とその活用について

第7回 平成10年11月11日(水)
(1)「ひと社会のゆくえ〜メディア・コミュニケーションの時代へ」
   講師 (株)アイ・コミュニケーションズ 代表取締役 山田尚氏
(2) 新事業の事業化の視点とプロセスに関する協議

第8回 平成10年11月25日(水)
(1)コーディネータからの情報提供と提案
(2)新事業創出研究会のメンバーからの新事業の基本コンセプト説明

第9回 平成10年12月9日(水)
(1)メンバーからの新事業の提案
   岡崎宅配システム(仮称)プレゼンテーション
(2)提案新事業のフレーム作り

第10回 平成10年12月24日(木)
(1)新事業創出ワーキンググループ活動経過報告
(2)MICS通信サービス経過報告

第11回 平成11年1月13日(水)
(1)スクールズ・オンライン・ジャパンの活動報告(NPOの活動について)
   講師 株式会社メディアフュージョン 代表取締役 榊原淳氏
(2)三河スマートバレーネットワークと連携活動について

第12回 平成11年1月27日(水)
(1)新事業ワーキンググループ提案「いながらネット」の展開について
(2)新事業提案「バーチャル・コーポレーションを運用する通信制スクールシステムの構築」について

第13回 平成11年2月10日(水)
(1)「いながらネット」のフレーム作業の進め方について
(2)第2回コーディネートサミットの報告、並びに、次年度の展望について

第14回 平成11年2月18日(木)
(1)岡崎大学懇話会の平成11年度事業計画について
(2)産学のパートーシップ創出について

・「学生データべース」ワーキンググループの活動
第1回 ワーキンググループ会議 平成10年9月14日(月)
(1)就職支援学生データべースの構築について協議
(2)岡崎大学懇話会所属大学人材DBの構築について協講
      アドバイザー:愛知学泉大学家政学部講師 森屋祐治氏

第2回 ワーキンググループ会議 平成10年10月6日(火)
(1)就職活動における情報の活用について
      説明:学校法人安城学園 就職課 西本一信氏
(2)学生データべース構築のフレームについて

・「岡崎宅配システム」の事業化検討に関するワーキンググループの活動
第1回 ワーキンググループ会議 平成10年12月14日(月)
(1)事業の領域と視点に関する協議
(2)公的サービスとの連携のあり方に関する協議

第2回 ワーキンググループ会議 平成10年12月22日(火)
(1)部門別担当者、利益計算、作業具体化に関する協議
(2)事業プレゼンテーションに関する協議

第3回 ワーキンググループ会議 平成11年1月25日(月)
(1)事業詳細設計に関する協議
(2)今後の進め方に関する協議

第4回 ワーキンググループ会議 平成11年2月 1日(月)
(1)「いながらネット」の将来像の検討
(2)具体的活動の検討
(3)事業部門の検討(導入およびリサーチの手段・方法を含む)

第5回 ワーキンググループ会議 平成11年2月 8日(月)
(1)事業の導入とリサーチ方法の検討
(2)事業の展開スケジュールにつき検討

第6回 ワーキンググループ会議 平成11年2月16日(月)
(1)介護・福祉面における行政との連携について
(2)新事業創出研究会におけるプレゼンテーションについて

・ 産学研究会
 地域活性化を目標とした岡崎市内の私立2大学4短期大学の研究者および市内在住の研究者で組織する岡崎大学懇話会を中心として、各大学の情報公開とニュービジネス創出のための産学協調活動のあり方に関する研究会。

第1回 10月21日(水)
  講 演『経営革新と連結の経済性』
  講 師:愛知学泉大学家政学部 小川宣久 教授
  会 場:愛知学泉大学岡崎キャンパス
  参加者:49名

第2回 11月18日(水)
  講 演『国際化時代のストレス対処法』
  講 師:岡崎学園国際短期大学 文野峯子 教授
  講 演『吉田松陰教育の現代的意義』
  講 師:岡崎学園国際短期大学 川口雅昭 教授
  会 場:岡崎商工会議所 特別研修室
  参加者:32名

第3回 平成10年12月16日(水)
  講 演『知的所有権とは一会社が創り会社が守る一』
  講 師:愛知産業大学短期大学 生駒正文 教授
  会 場:岡崎商工会議所中ホール(2F)
  参加者:42名

第4回 平成11年 1月20日(水)
  講 演『21世紀に向けての都市環境の形成』
  講 師:岡崎女子短期大学   中垣洋一 学長
  講 演『都市観光の拠点としての岡崎の可能性』
  講 師:岡崎女子短期大学   井口貢 助教授
  会 場:岡崎商工会議所 中ホール
  参加者:45名 

・コーディネート活動支援事業ファイナルセミナー
 日米欧の地域活性化事例紹介。内外から3名の研究者を講師に迎え、日米欧における地域活性化の成功事例紹介とその大きな要因と考えられる非営利組織NPOの設立コンセプトとその現況に関する報告。
  日 時: 平成11年2月24日(木)
  会 場: 岡崎市情報ネットワークセンター 
  テーマ:「日米欧の地域活性化事例紹介」
    参加者:58名
  ・イギリスにおける地域活性化と産学連携の取組 
   講師:The University of Nottingham Senior Lecturer 崔 宏昭 氏

  ・北欧地域における地域活性化と産学連携の取組
   講師:北海道東海大学 教育開発研究センター 教授 川崎 一彦 氏

  ・日米の地域活性化と産学連携の取組
   講師:名古屋外国語大学 教授           柴田 祐作 氏

・バーチャル・ベンチャー・コーポレーションFrontiaの拡充整備
 岡崎市内の市民企業家が設立したネットワーク上の仮想会社VVCフロンティアの機能拡充整備。既存の市内産学官情報に加え、主として市内商店地域の地図情報とデータベースシステムの構築。

・岡崎大学懇話会研究者名鑑
 産学官協調活動に利用することを目的としたVVCフロンティア上に構築される岡崎大学懇話会参加研究者のデータベース。
参加研究者:114名(平成11年2月末現在)

・就職支援データベース
 岡崎市内の中小企業の採用活動の支援を目的としてVVCフロンティア上に構築されるプロフィールエントリーシステムの構築。

・中心商店街顧客情報
顧客管理を目的としてVVCフロンティア上に構築される商店街訪問客2000名のプロフィールデータベース。

・新事業構想;宅配システム「いながらNet」
 新事業創出研究会から生まれたニュービジネス構想。現在、実験事業期間を含め、組織・システム・マーケティング・法律の面から事業化の検討中。
(検討詳細はワーキンググループ会議録参照)
 参加企業:NTT岡崎営業支店
     (株)イクス
     (株)澤田繊維産業
     (資)多々内モータース商会
     (有)イーエルプランナーズ
     (有)竹田鍍金工業

・新事業構想;通信制スクールシステムの構築
 新事業創出研究会から生まれたニュービジネス構想。現在、組織・システム・法律の面から構築可能性の検討中。岡崎大学懇話会においても必要性が認識されている。
 参加企業:NTT岡崎営業支店
     (株)西三河ニューテレビ放送
     (株)岡崎情報開発センター
     (株)ヤマサ
     (株)中村科学機器
     (株)ダッド
     (株)名古屋カラー三河現像所

・新パートナーシップ
 岡崎大学懇話会と新事業創出研究会の合同協議会から創出された大学デザイン系学科と市内の家具製作販売会社の技術協力パートナーシップ。
 参加企業:愛知産業大学
     (株)オリバー

4.コーディネータ相互のネットワークについて
 T.他のコーディネータとの連携はない。
 U.コーディネータ相互の人脈
   財団法人 北海道地域技術振興センター 瀬尾英生氏
   ファイナルセミナー開催についてご協力を賜わった。

5.事業の継続性について
 T.来年度以降のこの事業の継続方針
  ・バーチャル・ベンチャー・コーポレーションFrontiaの更なる整備
   (アクティブ・バーチャル・モールの構築と運用)
  ・新事業創出研究会から生まれた新事業構想の実現化への努力
  ・産学間で生まれた技術協力パートナーシップの育成と新パートナーシップの創出
  ・新事業のNPOとしての実現化への検討
  ・産学協調活動の基盤整備事業

 U.事業化の可能性
  ・コーディネート活動のNPO活動としての位置づけの検討

[参照ホームページ]
 http://www.frontia.co.jp/

                         



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