人間環境大学 人間環境学部人間環境学科長 人間環境専攻長 教授 倉田 亮 氏

岡崎市本宿町上三本松6−2 TEL48−7811

水環境の分野にすすまれたのは?
 私が大学で研究を始めたころ、「獲る漁業から作る漁業へ」ということで、日本の沿岸各地で盛んに養殖が行われ始めたのですが、一方で「赤潮」という問題も起こるようになってきました。一回の赤潮で何十億・何百億円という被害を起こすのですから実に深刻な問題です。当時は発生理由が解明されておらず、「その理由を解明しよう」と思ったのがこの道に進んだきっかけです。

赤潮の発生理由はどのようにして解明されたのですか?
 当時、水中の「窒素」と「リン」の割合が一定の数値になった時に赤潮が発生するのではないかと考えられていたのですが、それだけでは必ずしも赤潮が発生する訳ではないということが分かったんです。それでは、他に何か原因があるのではないかということになりまして、その結果“ビタミン”が急速な生物の増殖を引き起こしているのではないか、と注目を浴びるようになりました。しかし、あるかないか分からない程のごく微量のビタミン濃度(1gの10億分の1)を測定することは大変難しいことで、多くの研究者は避けていたんです。当時水圏のビタミン分析をやっていたのは、日本では私を含めて2名しかいませんでした。結果、たった3種類のビタミンが赤潮を引き起こす原因になるということをつきとめました。

ビタミンの分析をされていることが縁で活躍の場が世界に広がったそうですが…
 赤潮を防ぐ対策を科学的に解明しなければ、ということで滋賀県琵琶湖研究所が設置され、本格的に始動することとなった矢先、時の滋賀県知事が「世界湖沼会議」の開催命令を出され、私もスタッフとして携わることになった訳です。この会議で世界各国52湖沼の詳細な情報を掲載したデータブックを配りましたら、国連・環境計画事務局長の目にとまり、もっと国の数を増やしたものを製作して欲しいという依頼がまいりました。これに応えて1985〜94年にかけて世界73ヶ国、217湖沼のデータをまとめたものを完成させました。編集幹事という立場にあった私は60ヶ国ほどを自身の足で回りましたが、これは命を縮めるような行動と作業の連続でした。ある時などは国境警備隊に取り調べを受けたこともあり、その時ばかりは「これまでか」と思いましたね。

 現代は環境の世紀です。規模の大小に関わらず、環境に配慮しない企業は生き残れなくなっています。いかに排出負荷を低くするか、というところがポイントで様々な行動の起こし方があります。環境は「知識・技術・英知」で創造していけるものであり、一市民として社会に存在する上で、企業は様々な方法を勉強するべきであり、環境という切り口からお手伝いできることがあれば嬉しく思います。

も ど る