岡崎市内にある大学の先生にお話をお伺いするコーナーです。普段なかなかふれることのない“知の世界”へ皆様をご案内します。

愛知学泉大学 家政学部 教授・農学博士 山口直彦 氏
岡崎市舳越町上川成28 TEL34−1212

この研究分野に進まれたのは?

 大学卒業後、最初は愛知県食品工業技術センターの菓子課で、「ブドウ糖」の研究をしていました。当時は砂糖が手に入りにくかったので、その頃大量生産が可能となった「ブドウ糖」を何とか代替品として使えないかと研究していたのですが、砂糖に比べ焦げやすいブドウ糖は、代替品としてはなかなかうまくいかなかったのです。しかしこの“こげ”が、油の酸化抑制に効果があることが分かり、それ以来「油の酸化」についての研究を続けています。

具体的にどんなことを研究されているのですか?

 主な研究テーマは、「油の酸化防止」で、特に“抗酸化物質の研究”と“包装技術による食品の品質保持期間の延長”について研究しています。

 油に含まれる脂肪酸には大きく分けて2種類あり、普段私達が摂取している油の大半がn−6系の脂肪酸(リノール酸等)なのです。n−6系の脂肪酸は大豆油、なたね油、トウモロコシ油等に多く含まれ、血栓、脳梗塞、アレルギー(アトピー)、大腸がん・乳がんなどの生活習慣病の原因となるともいわれています。これに対して、主に青身魚に含まれるn−3系の脂肪酸(EPA、DHA)及びしそ油に約60%含まれるリノレン酸にはn−6系の脂肪酸のような害は少なく健康の維持のために必要な成分です。しかし現在、私達が摂取する身近な食材にはn−3系脂肪酸を含むものが少なく、上記したしそ油は貴重なn−3系脂肪酸の供給源であると考えます。しかしながらしそ油は大変酸化が早く安定的に加工食品へ添加することは難しいのです。私は現在、このしそ油をクッキー、マヨネーズ、マーガリン、ドレッシングなどに加え、これら食品の酸化安定性の向上のために頑張っています。
 また、各種包装技術により油脂食品の劣化防止についても研究しています。

地元企業の方とも連携をとられているとおききしました。

 地元では、2年ほど前から太田油脂さんと油の抗酸化を視野に入れた新製品の開発などについて共同研究しています。その他にも、「ピーナッツの酸化防止」や、光の遮断による「お菓子」の賞味期限の向上などについて企業と共同研究をしてきました。
 企業と大学が共同で研究することは、相互にメリットを生む大変素晴らしいことだと思います。企業の方から相談をいただいたら、できる限りご協力できればと思っていますし、どの研究者にとっても頼っていただけることは同じく喜ばしいことだと思うので、ぜひ気軽に大学に声をかけていただければと思います。
 今後も自分の研究をさらに進め、それが企業の方々にも役立てていただければ大変嬉しく思います。

も ど る